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 ※※※ 2021 年の収穫 ※※※

                       ### 隠岐版 ###
                 ---- 現地で確認・同定済のもの (*: 帰化種)----
 〔島根初〕 ------ 島根県初記録
ヤクシマヒメアリドオシラン
   (発見:針本翔太氏,産地5地点のうち1地点を確認)

 〔隠岐初〕 ------ 隠岐初記録
コケミズ (情報:長岡桂太郞氏,島後 中村)

 〔初確認〕 ------ 隠岐の情報のみで未見だった
ミヤコアオイ (情報:守本智子氏,五箇 小路)
ウラジロマタタビ (白島崎灯台)
センブリ (情報:脇立夫氏,西郷 岬)

 〔再確認〕 ------ 長く現状不明だった

 〔新産地〕 ------ 稀産種の新産地
カタクリ (情報:守本智子氏,都万 佐山)
キリンソウ (情報:守本智子氏,島後 中村)
ケカモノハシ (白島崎)
ゴマノハグサ (情報:深谷治氏,海士 家督山)
シャリンバイ (知夫 来居)
ハイチゴザサ (近石川上流)

 〔帰化種 隠岐初〕
*セイヨウフジバカマ (島後今津・白島崎)

 〔再同定〕 ------ 同定やり直し
チョウセンガリヤス (重栖湾・白島崎・海士 豊田)
スズメノテッポウ (海士 東)
*オオオナモミ (国賀海岸)

 〔島別新産〕 ------ その島での初確認
*コセンダングサ (島後 今津・元屋)
*ワルナスビ (白島崎 入口)

 ゲジゲジシダには2種がある

ゲジゲジシダに種内倍数性(2倍体・4倍体)があることは以前から知られていたが,今までは一つの種として扱われて来た。事実図鑑類でも,説明文は両者を含めたものになっているし,図版も2倍体であったり4倍体であったり。
但し,『日本産シダ植物標準図鑑(海老原淳,2016)』には,両方の図(標本写真)があって比較に便利。

最近(2021)決定的と思われる報告が出た。
Species Delimitation in the Phegopteris decursivepinnata
    Polyploid Species Complex (Thelypteridaceae)
著者は,首都大学の藤原泰央氏 他9名,共著者には芹澤俊介・海老原淳両氏も含まれる。

今後は以下の3種に分けられるであろう。
 1. オオゲジゲジシダ Phegopteris koreana B.Y.Sun & C.H.Kim
 2. ホウライゲジゲジシダ
         
     Phegopteris taiwaniana T.Fujiw., Ogiso & Seriz.
 3. コゲジゲジシダ Phegopteris decursivepinnata (H.C.Hall) Fée
   (1 & 2: 2倍体, 3: 4倍体)
自家用に検索表を作ってみた。今は冬で枯れているので,現物について確認はしていないが…。なお,ホウライゲジゲジシダ(コゲジゲジシダに似る)の日本の産地は鹿児島県と沖縄県だけなので省略。

  【 検索表 】
1. オオゲジゲジシダ
 ① 葉身中央部の羽片:中裂~深裂,深く切れ込む。
 ② 羽片の間隔は広く、中軸には羽片と羽片の間に翼状の葉片をつける。 
 ③ 葉脈は辺縁に達しない。
3. コゲジゲジシダ
 ① 葉身中央部の羽片:全縁~浅裂,切れ込みは目立たない。
 ② 羽片と羽片は連続しており、翼状の葉片がつくことはない。
 ③ 葉脈の大多数が辺縁に達する。

典型的なものは一目で分かるが,中間形が問題である。どの程度の変異の幅があるのか?
なお,オオゲジとコゲジの雑種(3倍体)も時に見られるという。どちらつかずの中間形に出会ったら,まずソーラス・胞子の観察をすべきだろう。

 ケカモノハシ Ischaemum anthephoroides

カモノハシ I. aristatum var. erassipes との区別のみが必要である。
他にも似た種
  (変異)  は色々あって鬱陶しいが,他のものは「台湾・沖縄・奄美・小笠原・紀伊半島以南」のいずれかに産地が限らているので無視する。

検索表は以下のようであるが(茨木靖 2016),昔からこれは変っていない。
 1. 稈の節には長毛がある ------- ケカモノハシ
 1. 稈の節は無毛 ---------------- カモノハシ

長田武正(1989)に拠ると以下のような差異もある。
 1. 葉舌は高さ 1 mm内外。葉は両面とも平伏した密毛がある。
                 ------ ケカモノハシ 
 1. 葉舌は高さ 3-4 mm内外。葉は無毛,稀に多少の開出した毛がある。
                 ------ カモノハシ

今回の採集品は,「稈の節は無毛」なので,検索表にそのまま従えばカモノハシということになる。
ところが,葉舌の高さは1mm,葉には肉眼で白く見えるほどの密毛があってふわふわしたビロードの触感。どう考えてもカモノハシではあり得ない!

どうすればいいのか?今 (10月中旬) は「節の毛」が落ちた状態なのではないか…。芒は完全に無いが,小穂の長毛は下部に僅かに残っていた。カモノハシの小穂に毛は無いはず。

来年,開花の始る8月初旬にもう一度観察し,確実な同定にしておきたい。

 チョウセンガリヤス Cleistogenes hackelii (Honda) Honda

隠岐ではこの種を知っている人も見た事のある人も居ないような気がする。限られた特定の場所にしかなく,一生歩いていても出会えないような希産種というのはある。しかし本種はそれほどでもない。過去に,西ノ島:2・海士:1・島後:2 の計5ヶ所で出会っていた。そして今回新たに,海士:2・島後:1 ヶ所で確認した。

隠岐での記録は,岡部武夫: ×,丸山巌: ×(島根半島: ○・三瓶山: ○)。杦村喜則氏は「ほぼ全域に分布」としているが,県内の標本は何故か「都万村津戸 1982」の1点のみ。

何故気付きにくいのか?地味で目立たないからである。本種の一番の特徴は “存在感ほぼゼロ” という点かもしれない。地味なイネ科といえども花の時期には,特徴のある穂(花序)が立ち並びよく目立つものである。少なくとも「そこに何かがある」ことには気付く。高さ10cm前後の小さな種であっても,集団で群生するので気付かないということはない。気に留める,或いは採集して調べるかどうかは別として。

今回たまたま五箇地区の重栖湾を歩いていて,海岸の岩の平地で本種の群生にぶつかった。群生といっても密なものではなく,疎らに小さな株が散在,印象としてはうっすらとぼやけていて, “何かがある!” 感があまりない。今まで同一時期に何度か通った場所だが見落したのも無理はない。
よく知っている積りの「チョウセンガリヤスに似ているような?」とは思ったが確信が持てず採集して持ち帰った。


今まで見て来た本種のイメージとずれていた点。 ……:過去の印象。
 ①
ちゃんと株を作って花を着けた茎(稈)が,放射状に “立ち上がって” いた。
 …… せいぜい1~2本の稈が今にも倒れそうに曲って斜上したり,地面に長く寝ていたり。
 ②
花序や稈が赤紫色を帯びていた。
 …… そういう認識はなかった。灰緑~黄緑の記憶のみ。
 ③
閉鎖花が見付からなかった。
 …… 稈上部の葉鞘の中に閉鎖花が隠れていることを判定基準にして来たのだが…。閉鎖花のない集団もあることを初めて知った。属名 Cleistogenes は閉鎖花を意味する。


本種の特徴。今回新たに確認したことも含め。
 (1)
円錐花序ではあるが,枝は疎らで2-3個と少なく,しかも片一方だけに出たりして,出来損いの花(生長不良)のように見える。いかにもみすぼらしい感じ,そもそも花の着き自体も悪くて,イネ科によくある集団的な賑やかさがない。
 (2)
海岸の岩場のものと思い込んでいたが,海岸から遠く離れた場所でも確認できた(島後:1・海士:1)。山地でも岩の露出した草地が狙い目である。何故か斜面や崖を好むように思える。何時か高い山の上でも見付けたい。
 (3)
茎は細いが,硬く丈夫で針金を思わせる。手で持って強く引っ張ると根茎もろとも抜けて来る。高さは40cm前後の印象だったが,崖に垂れているものは1mを優に超えていた。
 (4)
根元(根茎)に,竹の子を思わせる小さな越冬芽(来年用)が着いているのも特徴の一つ。
 (5)
花の着く稈の上部には,ごく短い葉がパラパラと疎らに着く程度だが,稈の下方(或いは花序のない茎)では,短い (10cm以下) 披針形の葉が広く(直角に)開出して混み合う。イネ科では普通にある,細く長い "線状" の葉はほとんど出ない。
 (6)
葉鞘に疎らな開出毛があることが良い特徴とされるが,無いことも多い。但し,葉鞘口部の白い長毛はよく目立つ。この葉鞘や葉にある長白毛は,基部がイボ状に膨らんでおり (tuberculate-hispid)特徴的。毛は落ちてイボだけ残っていることもある。
 (7)
小穂は細長く斜上して鋭い感じ,小花は1~4個と少ない。護穎に芒はあるが短くて目立たないことも。とにかく覇気のない何か淋しそうな花序である。



  【追記 2021.10.22】

上に書いた本種の見え方・あり方は,海岸付近でガンガン陽の当る岩っぽい場所のものであった。
昨日は,半日陰の林内の土の深い場所で観察できた,と言うか存在に気付いた。確かに陽光地に限る訳ではなさそうだ。五箇地区白島崎の先端に至る遊歩道 (1km強) 沿いである。

今回の印象はかなりはっきりしており,これも!これもだ!と気が付きやすかった。

 (a)
長さ40~60cmの稈がギッシリ集って立ち並びかなり特徴的。但し決して直立はせず,さりとて倒れ伏すというほどでもなく斜上。
 (b)
一番目に付いたのが,稈の真っ直ぐさ。細い一本の棒そのもの。しかも花期がこれからなのか,花序は全く枝を出さず,稈に続く単に細い直線。
 (c)
今回は,元気のない変な花序や,倒れ伏す疎らな稈ではなく,真っ直ぐな細長い稈の "集団" が目に付いた。葉・花序よりも稈の姿が印象に残った。


  【追記 2021.10.28】
海岸の岩上には, "やや普通" に見られることが分った。本種を今まで "稀" と思っていたのは,単に見落してチェックしていなかったからに過ぎない。
『隠岐版RDB』で「絶滅危惧Ⅱ類」を予定していたが取り消すことにする。

「閉鎖花」は常にある訳ではないがやはり良い判定基準であると思った。 "8割以上" に見られる,という印象。

ガマズミ類3種の見分け方

ガマズミ・コバノガマズミ・ミヤマガマズミは,互いに似ていて判断に迷うことがある。一目でパッと分るようになりたいと,歩き回って観察を続けた(4日間)。
これで大丈夫そうと納得できたので,結果をまとめてみた。初心者の助けにもなるかと感覚的な表現を心掛けた。

    ⇒ [PDFファイル
プロフィール

T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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