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隠岐のハギ類 Ⅱ.

ハギ類(ハギ属 Lespedeza ヤマハギ亜属)の分類は厄介だと感じて来たし,世間でもそのように言われている。しかし地域を隠岐に限定すれば,そんなに恐くはない。何よりも,「難しい,分らない」と思っていると志気も鈍ってしまう。

そもそも,島根県で記録があるのは次の4種に限られる。わずか4つのうちのどれかなので,何とかなりそうな気もするがなかなかそうは行かない。例えば,何処にでもあるヤマハギが本当にヤマハギかどうかを確かめるのも,独力では容易ではなく,初心者には不可能に近い。知っている人に聞けば一瞬で分るわけだが…。

 ヤマハギ  L. bicolor
 ツクシハギ L. homoloba
 ニシキハギ L. japonica var. formosa
 マルバハギ L. cyrtobotrya

ハギが分りにくい原因は,分類形質が変化して他種との区別が曖昧になることである。つまり同一種内での変異の幅が広い。従って,初めは標準的な型に限って,それについての確実な把握を目指すべきである。どっちつかずの中途半端なのが出て来たら,一時棚上げでこだわらないことにして。最初から何もかも分ろうとするのは挫折のもと。難しい種にはペンディングが有効な手段である。

見掛けでは,特にヤマハギの若い株に注意。葉が大きくなって濃緑,花序も大形で花付きよく,うんっ?と思うことがよくある。


 (1) ヤマハギ
隠岐の自生種はほとんど全て本種である。何しろ島後の西半分以外では,他のものを見たことがない。隠岐では,何も考えずにヤマハギと言っておけば正解になる。

そこらの目の前に沢山あるのがヤマハギ。ただし,島後の西半分(加茂~都万~五箇)では目の前はツクシハギになる。乱暴に言えば同定不要ということだ。

ハギの同定には通常「萼裂片(萼歯)の尖り方」を使う。本種は『鈍頭~鋭頭』で “円頭” と “尖鋭頭” の中間ということになる。言葉では分りにくいので,実際に実物を数多く見る必要があるが,イライラすること必定である。それほど変化が多い。生長段階によっても違って見える(花~果実)。

比較的安定していて分り易いのは,「旗弁(上側の花びら)の基部のくびれ方」である。旗弁の下部の両側が折れ曲って耳状の突起ができるのだが,これが『半月形で長く,折れ目は直線的でくびれない』。

 (2) ツクシハギ
島後の西側沿岸部では,まだツクシハギ以外のものを確認できていない。逆に,他の地域では本種を見たことがない。綺麗に住み分けができており不思議な気がする。この種を知るには,何はさておき島後西部に出向くことである。

萼歯は『円鈍で幅広』,尖る感じは少なく長さも短い。旗弁下部の耳状突起は『腎臓形で大きく,基部は激しくくびれる。』。両側の耳がくっついて重なることが多い。

更に,花があってもなくても使える最有力な特徴は,『小葉の表面が無毛,裏面に微細な圧毛が密生』。他種の葉の表面には多少とも毛がある。ただしハギ類の毛は落ちやすいので新葉で見ること。

本種の裏面の毛は宿存性(いつまでも残る)だが,10倍ルーペでもやっと見える程度。うっかりすると見落すほどで,それがユニークな特徴となっている。そして,これらの「葉の毛」判定法は曖昧さがなくて万能です。

他にも,「花が白っぽい,葉の質が厚く硬い,上側の萼歯の切れ込みが深く萼が5裂に見える」など,状況証拠は色々あるが,変化があって常にそうとは言えないので最初はこだわらない方がよい。

 (3) ニシキハギ
島後の新しい道路の道端で,時々見かけるようになって来た。道路工事に伴って最近入って来たものに違いない(国内帰化)。

『萼歯は細長く尖り,萼歯は萼筒よりも長く伸びる』,これがまず第一のポイントだが,『はっきり木本で,茎は冬にも枯れ込まない』も分り易い。姿は他種よりもごつい(高く大きい)感じがする。

そして,『葉の表面に圧毛が密生,永存性で落ちない』が一番確実な判定法。成葉の表面(上面)をルーペで見れば絶対に解決する。

 (4) マルバハギ
一応隠岐の記録はあるがまだ発見できていない。単に「丸葉」という程度の理解で,あるいは?と思ったことは何度かあるが…。

花序(花房)が短くかたまってつくのが特徴とされる。ハギ類は葉腋から花序が出るが,『その葉よりも高くは抜け出ない』。

自信が持てなければ,『萼歯は鋭く尖り,先端が針状』を確かめれば完全。萼歯の先端が針になるものは他にない。

他には,花冠の『竜骨弁(下側)が翼弁(両側)より短い』という特異な特徴もあるらしい。

 (5) ミヤギノハギ
人家の庭などの栽培種なので参考までに。逃出さないようだ。如何にも園芸品種という雰囲気がある。

隠岐としては他に,キハギ L. buergeri ,ケハギ L. thunbergii ssp. patens ,2種の可能性もゼロではない。しかしそれらは事件なので,妙なものを見付けた時に大騒ぎすればよい。

         [⇒ 隠岐のハギ類 Ⅰ.]

テーマ:自然科学 - ジャンル:学問・文化・芸術

隠岐のハギ類 Ⅰ.

Ⅰは自分で同定したい人のため。名前さえ分ればそれで十分という横着な向きはⅡを。しかし,答を見ないで自力で正解に達する方がスリルがある。犯人が分っている推理小説を読んでもつまらない。

しかも次の検索表は伝家の宝刀,これを使えば必ず結果が出せます。各種図鑑で挫折して来た人も。

【検索表 ハギ属ヤマハギ亜属】 (自家用)
 ※ 隠岐にあり得ないものは省略。島根県に記録のあるものは全て含まれている。

A.花は淡い黄色で紫斑がある。低木 ---------- キハギ
A.花は普通紅紫色。半低木~ほとんど多年草。
 B.花序は基部の葉より短い。萼裂片は先端が針状となる -------- マルバハギ
 B.花序の多くは基部の葉より長い。萼裂片は膜質で先は針状にならない。
  C.成葉の表面(上面)に一面に細かい圧毛がある(永存性) ----- ニシキハギ
  C.葉の表面に若い時に軟毛があっても,成葉では脱落して,まばら~無毛。
   D.萼裂片は円~鈍頭。旗弁の基部は急に細くなる。葉の上面は幼時から
    無毛。成葉の裏面に宿存性の微細な毛が密生(ルーペでやっと見える)
             ----------- ツクシハギ
   D.萼裂片は鈍~鋭頭。旗弁の基部は漸先形。葉の上面は幼時には多少とも
     有毛。成葉の裏面の圧毛はより長めでやや粗(ルーペで明か) -- ヤマハギ
   D.萼裂片は細長くて(筒部の約2倍長)鋭く尖り,強い1脈がある。葉の上面は
     無毛      ---------- ミヤギノハギ・(野生なら)ケハギ

   ※ 注釈
  ・半低木: 冬季に幹が大きく枯れ込む。
  ・基部の葉: ハギ類は葉腋から花序が出るが,その部分の葉(3小葉から
   なる)。
  ・成葉: 十分生長した葉。
  ・旗弁の基部: 上側の花弁を引っこ抜いて見る。
  ・急に細くなる: (花弁が内曲した)耳状突起の所で激しくくびれ,爪部が明か
   (柄がある感じ)。
  ・漸先形: 三角形状に直線的に細くなり,くびれがない。
  ・ルーペでやっと見える: ×10 程度のルーペで,うっかりすると見逃すような
   短毛!
(1/4mm以下)。
  ・萼裂片の尖り方は微妙なこともある。成葉葉面の毛の状態で判断するのが最も
   確実。ただし,ニシキハギは表面でツクシハギは裏面。 丁寧に慎重に見る
   こと。光を当てる方向を色々変えて。

         [⇒ 隠岐のハギ類 Ⅱ.]
プロフィール

T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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