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 T: テンツキ vs. K: クロテンツキ

クロテンツキ Fimbristylis diphylloides を少し丁寧に観察したので,よく似ているテンツキ(狭義)F. dichotoma var. tentsuki との対照表を作った。

 「花柱]
T: 扁平で,縁毛がある。
K: 細く,縁毛がない。

 [葉]
T: 葉には全て葉身がある。葉鞘のみからなる葉はない。
K: 無葉身で鞘のみの葉がある。有花茎基部に,短く長さ2cm弱。

 [毛]
T: 全体(葉・茎・花序)に微毛がある。量には個体差があるが,鞘は通常有毛。
K: 無毛。

 [小穂]
T: 狭卵形で長さ5~8mm。鋭頭で細長い感じ。赤褐色で光沢がある。
K: 卵形で長さ約4mm。鈍頭で短く丸っこい。やや暗褐色を帯びる。

 [苞]
T: 1枚は花序より長いのがある。
K: 皆(4~8枚)が花序より遙かに短く目立たない。

 隠岐諸島産 スゲ属 チェックリスト

スゲの一覧リストであるが,あまり意味がないかもしれない。残念ながら地元でスゲを調べてる人はいないようだ…。確認数は 46種,多いのか少ないのか?

  [確認]
    ✓: 採集・同定済み,: 要探索。
  [図]
    『日本産スゲ属植物分布図集(すげの会 2018)』に隠岐のプロットあり。
  [量]
    隠岐島内での分布程度を 3段階にわけて示す。
  [採集者・産地]
    OKA: 岡 国夫
    OKM: 岡本 香
    SGM: 杦村 喜則
    HSN: 星野 卓二
     《 》 : 筆者自身

            ⇒ [PDFファイル

 クロハリイ Eleocharis kamtschatica f. reduca の分布

塩性湿地生とされるクロハリイを確認した。母種であるヒメハリイ(ヒメヌマハリイ)
E. kamtschatica の “和名” をクロハリイとしている文献もある。

全国的な希産種と思われたので分布を調べてみた。ひと言で言えば,分布の中心
は “東海地方以東~北海道” 。西日本の記録は無きに等しい。

  ● : レッドリスト種
  ◎ : 稀・少
  ○ : 記録がある
  ? : 不明
  × : 記録なし(絶滅を含める)
  (註) 記録がヒメハリイ E. kamtschatica のみの場合は,それぞれ▲,△とした。

北海道: ○
青森: ◎,秋田: ●,山形: △,岩手: △,宮城: ○,福島: ◎
  ・・・分布が北に偏るが,東北地方にも多いわけではない。青森・山形・福島県
  では “稀” となっていた。産地が多く挙がっていたのは,北海道と宮城県のみ。

新潟: ○,富山: ×,石川: ▲,福井: ▲
  ・・・新潟県は佐渡の標本。石川県:Ⅰ類,福井県:Ⅱ類。

群馬: ◎,栃木: ◎,茨城: ◎,千葉: ●,東京: ×,埼玉: ×,神奈川: ×
  ・・・東京都・神奈川県は絶滅。栃木県は「移入種?」となっている。群馬県同様,
  海の無い内陸県であるのが不思議。

長野: ×,岐阜: ?,山梨: ×,静岡: ◎,愛知: ○
  ・・・『日本水草図鑑』の分布図では,長野と岐阜?に “点” (プロット)がある。
  そういうこともあるかもしれない。但し,詳細な『長野県植物誌』には記載なし。


滋賀: ×,三重: ●,京都: ●,奈良: ×,和歌山: ◎,大阪: ×,兵庫: ×
  ・・・京都府は現状不明,三重県は「生育地点数は2」,和歌山県は1地点で
  1996年の標本。大阪府はヒメハリイで絶滅。

鳥取: ◎,島根: ◎,岡山: ×,広島: ×,山口: ◎
  ・・・鳥取県は米子市の粟島干拓地。島根県は隠岐島のみ,男池(ラグーン)と
  重栖湾の休耕田。山口県は『植物誌(岡国夫 1972)』にはないが,
  『植物目録 2000』で「ごく稀」。

徳島: ×,香川: ×,愛媛: ×,高知: ×
  ・・・分布域に「四国」を含めている文献もあるが,大いに疑問。

福岡: ▲,佐賀: ×,長崎: △,大分: ×,熊本: ×,宮崎: ×,鹿児島: ▲,
   沖縄: ×

  ・・・ 福岡県で現状確認されているのは1ヶ所(10×10m)のみ。長崎県は大村湾
  の記録。鹿児島県は種子島と思われる。



 【付記 2019.7.8】
「・・・クロハリイは母種ヒメハリイに比べ国内での分布は南に偏る傾向がある.・・・」
  『近畿地方におけるヒメハリイとクロハリイ(カヤツリグサ科)の分布』 (堀内洋 2005)から引用。

 センダイスゲ その後

 K さん                     ### 隠岐版 ###

前回は全国的な “分布” について書いていますが,気になるのは隠岐島内の状況ですね。私の唯一の確認地は高崎山の登山路(照葉林内)で,小さいのが2-3株に過ぎません。「いつまで保つことやら…」と本気で心配,いや,実は諦めていました。そこで,消滅を確かめるべく先日(9/22)見に行ったのですが,予想に反して少し増えていました。樹木の枝を間引き,少し明るくしておいたのが効いたようです。しかし現状を変えるのはかなり危険なことで,現に今まで気付かなかったチヂミザサも広がっていました。しばらくは安心できません。

そしてその日の帰り路。穂をつけている小さなスゲを引き抜いてみたら何とセンダイスゲ。第一発見地から数百メートル離れた場所です。偶然目に止まったのが恥ずかしい!しかも足で踏みつけて。登山路沿に似た環境が点々とあるんですから,ちゃんと探しておくべきでした。「一つあったら,近くにもっとある」のはよく経験することなのに…,“近く” が数百メートルでウッカリしました。案の定,更に歩いた地点に径2mほどの密な群生!やはり,やや陽の射し込む明るい草地です(カノコソウの小集団のそば)。もう少し明るい場所だとワラビが生えたりして全然駄目なんですが。

これはいいぞと元気が湧いて,先日(9/30)国賀の杉村先生の採集地を再訪しました。10年前に先生から直接教わった場所ですが,その時は確認ができませんでした。私が牧へ入って行ったら,牛と馬が並んでジロジロこちらを見つめています。足もとを見れば糞だらけ。こりゃ駄目だわとすぐに引き返したくなったのですが,折角来たことだし(船に乗って自転車をこいで)せめて “無いという確認”でもと岩山を数m登ってみました。

ありました,ありました!牛の食べ残したもの達(センニンソウ・ニオウヤブマオ・ノイバラ・イヌザンショウ・アキグミ・…等)の塊が谷地坊主状に点々と残っていますが,その根際が待避所となっており10数ヶ所で確認しました。その後道路に戻り海岸の方に下りて行くと,やはり道筋に点々と出て来ました。これはもう希産種とは言えないような…,少なくとも隠岐では。

その日はそこまででしたが(時間切れ),一体どの辺まで広がっているか?を調べるべきだ(義務がある)という気がして,再度行ってみました(2015.10.5)。暇だなあ~と笑われそうです。入口のトンネル手前から国賀浜まで3kmほどを歩きましたが,道路際の禿山(牧草地)一帯に広く普通に生育しています(ただし海岸そのものでは稀)。場所によってはマット状に叢生していて驚きました。牛馬が好んで食べるものではないのでしょう。

今後は,摩天崖・イザナギ・赤尾・鬼舞は?と近くの似た場所(牧野)が気になります。どこまで広がりがあるんでしょう。あるいは西ノ島以外の島はどうなのか?もし,他の島にもあるということになれば注目(異例)です。中国・近畿地方の分布状況だけをみても,そんなにやたらにあるものとは思えません。他の島にないなら,それはそれで不思議ですね。何故国賀付近だけなのか…。


ついでに,ナキリスゲとの見かけの違いを書いておきます。同定も難しくはありません。

  ☆ 同定 ☆
以下の2つを押さえれば何の心配もなしです。
 (1) 秋に花(穂)をつける。
 (2) 長い匍匐根茎がある。

花期が秋のスゲはナキリスゲ属だけと考えていいでしょう。他にアキカサスゲがありますがこれは水辺の大型種。 “匍匐根茎” は普通 “匐枝” と言いますが,宗旨変えしました。こちらの方が分かりやすいように思います。

スゲの根を掘り起こすのは大変ですが,匍匐根茎を伸ばすスゲは,土に指を突っ込んで引っ張ると楽に抜けて来ます。横に伸びる根茎をちぎらないよう,2株くらいを一緒にほじくり出す感じで。

大きな株の場合は外周部の縁の方を掘って下さい。中央部に匍匐根茎はありません。横走根茎の役割は二世を作ることであって,自分自身が太るためではないのでしょう。

ナキリスゲの方は引っ張ったくらいではとても抜けません。根元が固くて指も突っ込めません。2-3年生の若い株は思い切り引っ張ると抜けますが,ひげ根があるだけで横に伸びる根茎(太い)はありません。

秋の今の時期に,引っ張って抜いてみれば分かるという有り難いスゲです。ただ,山野のナキリスゲ類を片っ端から抜いてみるという訳にも行きません。手も汚れます。そこで,場所や見かけの違いで見当をつけます。以下に挙げた基準は,そのような傾向があるということで例外も出ますが…。

  ☆ 見かけ ☆      (※ <-----> の右側ははナキリスゲ)
(a) 小さい。茎がゆるく集まる小さな株。
      <----->  大きい,普通葉長40cmほどになる。茎が固く密集した大株を
            作る(若い株は当然小さめ)。
(b) 複数の株が疎らに接して広がる。
      <----->  株は単独で離ればなれ,それぞれが孤立。
(c) 岩のある芝草地や疎林内。明るい場所を好み強い日射しも可。希少種。
      <----->  平地から低山地の林縁や樹林内。日陰に多い。ほぼ何処に
            でも普通にある。
(d) 有花茎は葉より短いことが多い。
      <----->  有花茎は明らかに葉より長くて超出。
(e) 小穂は茎頂の方に集まり数も少ない。各節は単生。
      <----->  小穂は下の方からも出,しばしば1節に複数が束生。

 オオハリイ 再説 (沈水形)

                       [前回 ⇒]
YList上で学名が更新されていたので(同一種内の変種)今後これに従うことにする。
 オオハリイ E. congesta var. congesta
 ハリイ    E. congesta var. japonica

これは『日本カヤツリグサ科植物図譜(星野卓二 2011)』,『日本の水草(角野康郎 2014)』と一致する。両書ではオオハリイに “f. dolichochaeta” (長い刺針)が付いているが,日本産は本品種に限るようなので省略してよいだろう。

『日本の水草』の解説に「ハリイよりも深い水域に生育することが多く,ときに完全な沈水形になる。」とあるが,その沈水形に初めて遭遇(2015.10.3)。何なのか???しばらく見当がつかなかった。近づいてよく見たら,葉や有花茎は水中に長く横たわり小穂のみが頭をもたげている。茎の長さは何と50cm!

細かく調べるまでもなく,これはもうオオハリイに違いない。隠岐で見るハリイ(そう多くはない)のイメージとはかけ離れている。ハリイの大きさは20cm以下,抽水状体はまずなし,と認識している(乏しい経験則だが)。確かに湿地は好むが,雨が降ったりしたら根元が浸る程度の場所,という印象しかない。

更に『日本の水草』に
 「穂や果実の長さに関してはハリイとオオハリイの中間形があり,変化の実態を
 再検討したうえでの分類学的・生態学的研究が求められる。」
という言及がある。実は,同定に自信を持てない個体に出会って,中間形があるかもしれないと気に病んでいたところだった。自分の観察不足のせいか?あるいは,そもそも両者を区別できるのか?

ただ,「中間形があるから別種にはできない,同一種だ」とは限らないだろう。別種であっても変異の両極が重なることは十分あり得る。ましてや今回の学名は“変種”同士なので問題はない。2つを分けるか分けないか?それは,両方の典型品の差異の大きさ(形態のみでなく生態や分布も)と,中間形の出現頻度が影響すると思われる。

中間形は遺伝的に固定されているはずであるが,単なる生態変異の可能性もある(環境条件や生育状態の差)。もっと観察数を増やせば推定できるだろうし,栽培してみれば更に良い(種々の条件下で)。いずれにしても,オオハリイの憂鬱が消えてスッキリ,気分が好くなった。中間形はあってよい。他にもそんな例は幾らでもある。

そして今回のオオハリイ。巨大さと沈水生以外の,稈径・小穂・鱗片・痩果の計測値はかなり微妙であった。ただし,オオハリイとして矛盾はなく,ハリイの否定もできた。かろうじて。ただ一つスカッと明瞭であったのは刺針状花被片の長さ。柱基よりはっきりと高く “痩果本体の2倍” はある。これにしても,書籍やネット上の写真を見ると変化があるようだが…。
プロフィール

T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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