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 コスミレ その2

変ったコスミレに出会ったついでに,今までの経験をメモしておくことにした。個人の感想のようなものなので,誰か補足・修正して下さるとありがたい。

 (1) 新型(自分にとって)の産地
2013.4.4,西郷地区犬来と西郷地区東郷,集落を出外れた農耕地周辺の路上。いかにも本種の好みそうな場所である。そう言えば, “スミレ” が生えるようなこんな道が珍しくなっている。舗装されたり,車が踏固めたりで。今や懐かしい風景というか…。

 (2) 環境と花期
似たような環境を好むスミレ達に,ノジスミレ・ヒメスミレ・アリアケスミレがある。この3種は元々隠岐にはなくて,近年本土から入ったものと思っているがどうなんだろう。古い記録には出て来ないし,以前はほとんど目にすることがなかった。コスミレはこれらとは少し違い,昔からあったようだし,人の行かないような山地の林内でも出会うことがある。

ついでに言えば,最近やたらに市街地で目立つようになった本来のスミレ V. mandshurica 。これも,どっかからやって来たような気がしてならない。かつては今のようにありふれていなかったし,自生場所の自然度は極めて高かったように記憶する。

花期は,ノジスミレよりは遅れるものの相当早い。ヒメスミレ・アリアケスミレの開花はこれからだし,スミレもやっと局所的に咲始めたばかりだ。花期の違いも同定の参考になる!

 (3) 隠岐での分布
島前(3島)と島後では全然様相が違う。島前にはほとんど無いと言ってよい。焼火山中で2005年に深谷治氏が発見したのが唯一の記録である。ここは近くにクマガイソウがある杉林の一画で,コスミレとマルバスミレが共存している。

海士町役場構内の築山にもあったが,これは芝と一緒に持込まれたものである。長く繁栄していたが先日行ってみたら消えていた。いじけたスミレがパラパラ残るだけ。芝刈りのやり過ぎである。

一方,島後ではあちこちに普通に見られた。皆市と都万目の記憶がはっきり残っている。集落内はもちろん,周縁の林縁にも沢山あった。決して捜して見付けるようなものではなかった。島前と島後での分布の違い,これもその一例だと思ったものだ。

 (4) 生育量の消長
ところがここ最近,何年もコスミレの群落を目にしていない。捜してみたわけではないが…。この間自転車で走りながら路上に1株見付け(近石付近),何年振りだろうと感慨にふけったくらいである。そもそも記憶に頼って現況を書いていること自体がおかしい。昔(30年前)コスミレが賑やかに咲いていた皆市・都万目地区にはよく行っているのだが。

もし極端に減ったのが事実とすれば,その理由が分らない。環境の荒れ地化・乾燥化・藪化・帰化種との競合,もしそうだとしても原因の一部でしかないであろう。あるいは,そういう増えたり減ったりする性質の持ち主しなのか?今回発見した自生地は,続けて観察した方がよい。


 〔追記〕 2013.4.16
焼火山のコスミレの産地に行ってみた。自分のイメージ通りの従来型であったが,葉の表面の毛ははっきりあるし,葉の裏も薄くはあるが紫色を帯び勝ちであった。過去には,そこまで細かく観察してなかったのかもしれない。

下の林道沿いにも10数株が進出していた。これは今回の “変ったコスミレ” にかなり近づいたもので, “変った” は変異というより単なる “生態差” かな,と思った。特に日照条件による。ただし,過去にも日当りのよい場所でコスミレを沢山見てきているので,完全に納得したわけではない。

側弁基部が有毛な型(ヒゲコスミレ f. barbata)も混じっていたが,区別することに意味はないと感じた。

全ての個体で距の外側に毛が生えていることに,ちょっと驚いた。やや例外的な現象と思っていたが…。隠岐のものは皆そうなんだろうか?

 コスミレ Viola japonica の変化

ちょっと変ったコスミレに出会ったので記録しておくことにする。今後,私と同じように戸惑う人がいるかもしれないので。

コスミレは昔からよく知っていて,一目で分る自信があった。固定的なイメージができていて(隠岐での経験に限るが),それで同定に迷ったことはない。ところが今回現地で浮んだ名前は,ノジスミレ V. yedoensis ・ヒメスミレ V. inconspicua ssp. nagasakiensis の2つだけ。自分にとっては全く初めての変化型ということになる。

(1) 葉の表面に立毛が密生~全草毛だらけ。
  …… 今まで本種が毛深いという印象はなかった。通常の図鑑でも,「まばらに毛があるかまたはほとんど無毛」とか,「ふつうは無毛だが,ときに葉の表面に毛のあるものもある」となっている。

(2) 葉の裏は濃い紫色で,表面はくすんだ暗い緑。
  …… 淡い黄緑色。黒っぽいという記憶はない。裏面が濃い紫でもなかった。

(3) 長めの三角形を思わせる卵形。
  …… 柔らかな草質で,幅が広めのふっくらとした長卵形だった。ほとんどこの一点でコスミレと判断していたのだが。

家に帰って,ノジスミレやヒメスミレでないことはすぐに分ったが,アカネスミレ V. phalacrocarpa (隠岐の記録なし)を否定するのに時間がかかった。唇弁の距に毛があったからである。花弁の外側に毛が生えるとは!距に毛があるのはアカネスミレとゲンジスミレだけの特徴とされている。

結局「アカネスミレの側弁の基部は “必ず” 有毛」という特徴を突止めた。持帰った標本の側弁がたまたま無毛でよかったのだが,ここが有毛だったら(西日本に多いという)どうしよう。萼や子房の毛の有無を調べるんだろうか。

『増補改訂 日本のスミレ(いがりまさし 2005)』
  「花の色や形態に変化が多く,観察者を困らせるスミレのひとつでもある。」
『日本のスミレ(橋本保 1971)』
  「本州では全体無毛,淡紫花の型が多いのですが,九州では,あちこちに毛が生え,花色の変化に富み,分類に困難を感じることが少なくありません。」

色々探し回ったが,「コスミレの距に毛が出ることがある」との言及があるのは,『野に咲く花(山と谿谷社 1989)』と,いがりまさし氏のWebサイトのみであった。総合的な判断で答の見当はついていたのだが,初心者はいつまでも不安なものである。

プロフィール

T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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