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 オカウコギ Eleutherococcus spinosus var. japonicus

オカウコギ,ヤマウコギ E. spinosus var. spinosus ,ウラゲウコギ E. spinosus var. nikaianus ,この3つの区別は難しいと言われている。3変種とも隠岐には過去の記録があるが,本当なんだろうか?

今まで葉の形だけで何となく判断してきたので,詳しく観察してみることにした。ただ,まだ若葉の状態で時季がよくない。成葉や花序を調べるための予習の積りである。

代表的な “検索表” を複数抄出したが,重視する形質やその表現に微妙な差があって興味深い。検索表間で多少の矛盾もある。それだけ変異が多いのかもしれない。

稀なことではあろうが,検索表から僅かに外れる変異型の存在はあり得る。つまり,どの検索表も絶対ではない可能性がある。できる限り多く複数の特徴を使って判断すること。

   (1) 原色日本植物図鑑(村田源 1971)
 1.小葉は長さ3-7cm,幅1.5-4cm,鋸歯は低くて内曲,重鋸歯にはならない。
   脈は下面に隆起しない ------------------------- ヤマウコギ
 1.小葉は長さ1.5-4cm,幅0.7-2cm,ややくさび状で,鋸歯は若木では
   欠刻様重鋸歯となる。脈は多少下面に隆起する
  2.葉は脈上に少数の毛状突起はあっても毛はない ----- オカウコギ
  2.葉は脈上に少数の毛状突起がある他に毛がある ----- ウラゲウコギ

 ・・・ “欠刻様” がポイント。鋸歯がはっきり(深く)切れ込む。更に,小葉の大きさにも差がある!
“突起はあっても毛はない” , “突起がある他に毛がある” ,この部分に感動。意味がはっきり分る。

   (2) 日本の野生植物(山崎敬 1989)
 1.高さ2-4m。葉は大きく,小葉は長さ3-7cm,幅1.5-4cm,鋸歯は低く,
   先は内曲し,重鋸歯にはならない ------------------- ヤマウコギ
 1.高さ0.7-1m。葉は小さく,小葉は長さ1.5-3cm,幅1-1.5cm,縁には
   しばしば重鋸歯ができる -------------------------- オカウコギ
   (変種)ウラゲウコギ: 葉の両面にあらい毛が散生する。

 ・・・樹高の比較が新鮮。確かに背丈を越えるものには1度しか出会っていない。これはヤマウコギの可能性もあるのでもう一度見に行くことにしよう。

   (3) 日本植物誌(大井次三郎 1978)
 1.葉は下面に毛がない
  2.小葉はやや小形であって,長さ2.5-4cm,草質で,円頭,基部が長く楔形
    に細くなり,側脈および小脈は下面がやや顕著であって,少し隆起する
             ----------------------------------- オカウコギ
  2.小葉は長さ3-7cm,膜質,鋭頭または鈍頭,側脈は隆起しない
            ------------------------------------ ヤマウコギ
 1.葉は下面に硬い短毛があり,脈は隆起しない ---------- ウラゲウコギ

 ・・・確かに葉脈の裏面への突出ははっきり感じられる。主脈だけでなく “側脈も” である。

   (4) 神奈川県植物誌2001(長谷川義人)
 1.葉の上面脈上に立毛がある。小葉は小型で同大。小葉は先端部に欠刻状粗鋸歯があり,基部はえぐれるようなくさび形。下面脈腋の膜状物は発達せず繊毛はやや露出する。散形花序の小花柄は長さ5~8mm
                           ---------------- オカウコギ
 1.葉の上面に毛がない。小葉5枚のうち中央の1枚はほかより大きく不同大。小葉は上半部に低平な鈍鋸歯があり,基部はくさび形。下面脈腋の膜状物は目立ち繊毛は内蔵され,ダニ室をつくる。散形花序の小花柄は長さ8~12mm
                           ---------------- ヤマウコギ

 ・・・ “立毛” となっているが刺状の突起のことであろう。葉先に向って斜めに出る。特に主脈の基部では著しい。 “薄膜”の有無も重要な区別点。 “ダニ室” が必ずあるなら最も簡明。本書の付図によると,オカウコギの鋸歯に極めて変化が多い。

   (5) 千葉県植物誌(大場達之 2003)
 1.高さ1~3m。小葉は長さ3~7cmでやや厚く,黄色みがかった緑色で内側に曲った低い鋸歯があるが,若枝では重鋸歯状になることがある。葉の下面の脈腋に膜があって下に毛が見える。葉柄の先端に刺針があるか,あるいは全く刺針はない。小花柄は長さ8~12mm
              --------------------------- ヤマウコギ
 1.高さ50cm内外。小葉は長さ1.5~4cmで濃い緑色,鋸歯は細かいが外向きではっきりしており,少なくとも一部の葉は重鋸歯状になる。葉柄は中間にも刺針がある。葉の下面の脈腋の膜は目立たない。小花柄は3~4mm
              --------------------------- オカウコギ

 ・・・高さ50cm内外,確かに!専ら地上を這い回っているものもある。しかし,1mを越えるものも稀ではない。 “脈腋の膜” はいくら捜しても見えなかった。膜がないことも特徴の一つであろう。葉質・色の対照は非常に面白い。

   ★ 自家用(試作)
 1.小葉上面の脈上に剛毛状の小さな刺が散生する ------ オカウコギ
 1.脈上に剛毛状突起はない
  2.小葉の先端部に,はっきり切れ込んだ鋸歯が出る
   3. 葉は両面とも毛はない(脈上以外) -------------- オカウコギ
   3. 葉の両面,特に下面に短硬毛が多い ----------- ウラゲウコギ
  2.小葉上部の鋸歯は低く,鈍頭~波状で弱い --------- ヤマウコギ


学名は新記載である, “Flora of Japan(KODANSHA,H. Ohba 1999)” のものを使った。同書の検索表は “日本植物誌” とほとんど変らない。

平凡社の図鑑では,オカウコギの分布が「関東地方南部・東海地方・紀伊半島」となっている。しかし現在は,もっと広く分布していることが分っている(中国地方・九州等)。むしろ,ウラゲウコギの方が分布が限られているようである。近畿地方と九州北部の周辺。


取りあえず分ったこと。
 ・ヤマウコギではあり得ない(今まで隠岐で見たものは)。
 ・ウラゲウコギでもないと思うが,この種は実態がやや不明瞭。
 ・小花柄の長さが分類形質として有力そう。
 ・変種間の交雑の可能性に言及した文献が一つだけあった。


 【追記 2013.5.3】
島後地区の皆市・歌木方面を一日歩いた。オカウコギにも注意して。何と10ヶ所以上で確認した。湿った場所には大抵ある。隠岐ではケヤマウコギ E. divaricatus より稀だと思っていたが,大きな間違いだった。

 
 【追記 2013.6.20】
オカウコギを気にしながら歩いていて,ケヤマウコギ E. divaricatus (隠岐には多い)の前で立ち止ってしまうことがあった。小さな若木は,オカウコギと結構紛らわしい。 “葉裏や葉柄に縮れた毛が多い” ので区別できるものの,葉の形だけ見るとオカウコギによく似ている。

花序や果実があれば,葉腋ではなく枝の先端につくのがケヤマウコギ。もっと簡単な,いつでも判る方法はないだろうか?実はあった。これなら,葉のない冬の枝(葉痕・冬芽)でも確実に判定できる。当然花や果実も不要。

枝に出る刺(とげ)の位置に着目すればよい。オカウコギやヤマウコギの枝上の刺は,葉柄の基部(付け根)に接して出る。一方ケヤマウコギの刺は,葉柄の基部ではなく葉と葉の中間部分に散在する。


 【追記 2014.12.25】
『葉上の小器官「ダニ室」 (西田佐知子 2004)』に拠ると,オカウコギにもダニ室ができることがある。上記検索表のダニ室は蓋然性(頻度)の問題と考えるべきである。また,『樹木の葉 (林将之 2014)』では次のように表現されている。
 ヤマウコギ : 葉裏の脈腋に水かき状の膜があり目立つ。
 オカウコギ : 脈腋に水かき状の膜はないか,多少ある。

プロフィール

T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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