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Ipomoea fimbriosepala Choisy

イポモエア フィンブリオセパラ,和名は未だない。和名のない顕花植物に出会うのは初めての経験。ヒルガオ科サツマイモ属。草姿は,最近時々目にするようになったグンバイヒルガオに似ている。サツマイモと同様の熱帯植物で,やはりピンク色のよく似た花が咲くらしい。
   【追記 2013】 長崎大学の中西弘樹教授による仮称は, ヒレガクアサガオ。

ちなみに,サツマイモもごく稀には花を着けるようで,年配の人に聞くと知っていることが多い。自分も子供の時に「上の畑で薯の花が咲いたわ」と祖母が教えてくれたが,見に行かずに終った。その頃は植物への関心はなかったようだ。

今年の9月11日,知夫村島津島の小浜(こばま)という入江で発見。砂利の浜辺に大きな株が2つ広がっていた。花が咲いてないので同定に苦労すると思われたが,他の地域での発見例(島根半島の鹿島町・美保関町 2011,新潟県柏崎市 2012)があって助かった。他には,能登半島(2007),長崎・対馬・天草(2011)の記録がある。九州では2004年頃には気付かれていたそうである。

非常に情報の少ない種で,まともな文献は『中国植物誌(Flora of China)』が唯一かもしれない。WEB上のデータもすべてここからの引き写しである。タイプ産地は東アフリカのマダガスカル島。中国(福建省、浙江省、広東省)・ニューギニア・太平洋諸島・メキシコ・南米などに分布するという。

分布で不思議なのは,台湾や沖縄に自生しないことである。そこから徐々に北へ上がってくるのが,南方系のものの分布拡大順序なのだが。いきなり日本海沿岸にポツンポツンとは!もちろん,対馬海流に乗ってはるばるやって来た自然分布で,いわゆる “帰化植物” ではない。

未知の植物に出会った場合,同定作業が最も重要であるが,本種は著しい特徴があって確実な同定ができる。
 (1) 萼片の稜に歯牙があってギザギザしており,中国名はそのものずばりの “萼歯薯” 。
 (2) 葉柄にはいぼ状の刺が散在,
 (3) 蔓には開出する剛毛が生える。しかも,毛のある部分とない部分があるという,奇妙な特徴がある。
花を見ていないが同定には不安を感じない。もちろん『中国植物誌』の記載に全面依拠した。日本の専門家も同じ見解である。

10月20日島津島へ。花が咲いていることを確信して,カメラを持って勇んで出かけた(島根半島や能登半島もこの頃に開花)。ところが浜に下りて茫然,跡形もなく消えてしまっていた。枯葉の欠けらもない。前回見た時から1ヶ月ちょっと,根こそぎ流されるような時化もなかったのに。

諦めきれずに,何故だろうと大分うろうろ歩いた。ふと気が付いたら,牛の親子が2組ぽかんとこちらを見守っている(島は放牧地)。好奇心が強いのか,退屈していたのか?私の後を追って浜に出て来たらしい。そうか!この連中が犯人に違いない。何食わぬ顔をしているが,近くに乾いた糞だって残っている。

そう言えば,サツマイモの蔓は牛の大好物であった。牛の干草に, “いもづる” をあちこちに引っかけてある光景はよく目にしたものだ。それどころか,サツマイモの葉柄は人間も食べていた。なかなかのご馳走であったことを思い出す。

種子が稔る前に食べ尽したかもしれない。だとすれば,一年草だと思うので来年の見通しは暗い。強敵が現れたものである。とにかく来年早い時期に再訪して,芽生えがあれば何か対策を講じたい。牛の来られない場所へ移植という方法もあろうが,浜辺への出口に10mほど鉄条網を張るのがよさそうだ。

帰り道で偶然知夫村の教育長に出会った。事情を話して「牛は海岸には用事がないですよね」に同意していただいた。もし生えて来ないようだったら,何年か待つしかない。今後の日本での,あるいは隠岐での定着の推移が興味深い。

テーマ:自然科学 - ジャンル:学問・文化・芸術

プロフィール

T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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