隠岐に トネリコ Fraxinus japonica そのⅡ.同定
⇒ [そのⅠ.分布]
図鑑類からの寄せ集めで,自己用に検索表を作ってみた。外国産の栽培種は除く。太字の和名は隠岐に記録があるもの。
ケアオダモの部分を詳しく書いたのは,まだ発見(確認)できていないからである。
トネリコ属は葉形が変化しやすく同定には注意が必要。枝や葉は数多く観察し全体の傾向(代表値・最頻値)をつかむ事が重要になる。一部の例外にこだわってはならない。
つまり,同定は “用心深く” あるべきだが,分類そのもが難解なわけではない。種の境界は明瞭で,亜種・変種・雑種のような中間型(個体)は現れないので安心してよい。
1: 葉は半常緑で革質。小葉は全縁。琉球産。
-------------------------------- シマトネリコ
1: 葉は落葉性で紙質。小葉は鋸歯縁まれにやや全縁。
2: 小葉は無柄又はごく短い柄がある。
3: 葉の中軸の小葉の着点に赤褐色の綿毛がある。
------------------------------------ ヤチダモ
3: 葉の中軸の着点に上記のような毛はない。
4: 小枝は太く径5mm以上。葉柄の基部は著しくふくれ枝を抱く。
--------------------------------------- シオジ
4: 小枝はやや細く,葉柄の基部は著しくはふくれない。
5: 芽の外側の芽鱗の先端は反曲し内側に茶褐色毛を密生する。
------------------------------ ミヤマアオダモ
5: 芽の外側の芽鱗は圧着する。
----
6: 小葉の鋸歯は低平で不明瞭,ほぼ全縁に見える。
・ 若枝・葉柄・葉軸に粉状の微毛(短腺毛が混じる)がある。
芽鱗には粉状の微毛があるか又は無毛。
・ 葉はやや革質で艶があり葉脈はあまり目立たない。
・ 低山地に普通。
------------------ マルバアオダモ
6: 小葉には明瞭な細鋸歯がある。
・ 若枝・葉柄・芽鱗には開出する粗毛がある,
又は無毛(アオダモ)。粉状の微毛はどこにもない。
・ 葉はやや草質で葉脈が凹む。
・ 山地帯で,ありふれてはいない。
----------------------- ケアオダモ
----
2: 小葉は明らかに有柄(長さ3mm以上)。
3: 小葉は卵形~長楕円形で,急鋭頭又は急鋭尖頭。
・葉はやや紙質で薄く,葉脈は溝状に凹んで顕著。
-------------------------------------- トネリコ
3: 小葉は長楕円状披針形,尾状に長く鋭尖する。。
・葉はやや革質で厚みを感じる。葉脈はそんなに目立たない。
4: 小葉柄は長さ1cm以下。
------------------------------- ヤマトアオダモ
4: 小葉柄は長さ1~3cm。奄美大島以南に分布。
-------------------------------------- シマタゴ
『日本の樹木(初島住彦,1976)』の検索表を辿って,トネリコ属を確信できた。花がないと属の決定には不安が残るものだ。
× A:葉は不明またはやや不明。
○ A:明らかな葉を有する。
× B:鱗片葉・針葉・線形葉。…
○ B:葉は通常上記のように狭くなく,…
× C:葉は互生または束生。
○ C:葉は対生または輪生。
×:葉は単葉。
○:葉は複葉。
[複葉対生または輪生]
× 1:葉は掌状複葉で…
○ 1:葉は羽状複葉…
× 2:茎は多少つる性。
○ 2:茎はつる性でない。
× 3:葉は2回または3回羽状複葉。…
○ 3:葉は1回羽状複葉。
× 4:葉は多肉多汁,…
○ 4:以上と異なる。
× 5:小枝は四角形。…
○ 5:小枝は四角形でなく,…
× 6:葉は3個輪生。…
○ 6:葉は3個輪生でなく2個の対生。
× 7:小葉は全縁またはやや全縁。
○ 7:小葉は全縁でない。
× 8:小葉は3個。
○ 8:小葉は5個以上。落葉の高木~小高木。
× 9:小枝の髄は太い。
○ 9:小枝の髄は大きくない。
× 10:葉には托葉と小托葉があり,…
○ 10:葉には托葉も小托葉もなく,…
× 11:小葉は通常5個で通常欠刻があり…
---------------------- (カエデ属の一部)
○ 11:小葉は5個以上で欠刻はなく,…
------------------------------ トネリコ属
【追記】 2018.6.20
その後アオダモ類を意識しながら歩いていたら,似たものが次々出て来た。
そしてこれは,今まで自分が「ヤマトアオダモの一型(幼木)として認識していたもの」だと気付いた。
今回は,薄暗い林内のやや大きめの木であったために,その事が思い浮かばなかったようだ。
ヤマトアオダモの変異(生態)について,今回以下の記載を確認できた!やっと確信が持てたと言える。
「・・・小葉の円いものがあり,県内にもみられる・・・。若木では小葉の形は円くなり別種に見えることがあり・・・」 (神奈川県植物誌2001 長谷川義人,2001)
「・・・葉の形状は変異がいちじるしい。幼木では小葉の数が多い。冬芽は大きくて黄褐色の縮毛が多い。」 (落葉樹の葉 田中敬幾,2008)
しかし, “検索表” に正直に従えば必然的にトネリコと同定されてしまう(葉形のみを使って分けているので)。今回自分が間違えたように。まさに,図鑑類の不備だ!
トネリコ属で重要な手掛かりの一つとされる “冬芽” ,2種の区分で冬芽に言及している検索表が一つだけあった! (『Flora of Japan T. Yamazaki, 1993』)
上記検索表に以下を付け加えて補完したい。自分なりの表現で直訳ではないが・・・。
・ ヤマトアオダモ : 冬芽の芽鱗には黄褐色の縮毛が密生。
・ トネリコ : 冬芽の芽鱗は微毛または無毛。
図鑑類からの寄せ集めで,自己用に検索表を作ってみた。外国産の栽培種は除く。太字の和名は隠岐に記録があるもの。
ケアオダモの部分を詳しく書いたのは,まだ発見(確認)できていないからである。
トネリコ属は葉形が変化しやすく同定には注意が必要。枝や葉は数多く観察し全体の傾向(代表値・最頻値)をつかむ事が重要になる。一部の例外にこだわってはならない。
つまり,同定は “用心深く” あるべきだが,分類そのもが難解なわけではない。種の境界は明瞭で,亜種・変種・雑種のような中間型(個体)は現れないので安心してよい。
1: 葉は半常緑で革質。小葉は全縁。琉球産。
-------------------------------- シマトネリコ
1: 葉は落葉性で紙質。小葉は鋸歯縁まれにやや全縁。
2: 小葉は無柄又はごく短い柄がある。
3: 葉の中軸の小葉の着点に赤褐色の綿毛がある。
------------------------------------ ヤチダモ
3: 葉の中軸の着点に上記のような毛はない。
4: 小枝は太く径5mm以上。葉柄の基部は著しくふくれ枝を抱く。
--------------------------------------- シオジ
4: 小枝はやや細く,葉柄の基部は著しくはふくれない。
5: 芽の外側の芽鱗の先端は反曲し内側に茶褐色毛を密生する。
------------------------------ ミヤマアオダモ
5: 芽の外側の芽鱗は圧着する。
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6: 小葉の鋸歯は低平で不明瞭,ほぼ全縁に見える。
・ 若枝・葉柄・葉軸に粉状の微毛(短腺毛が混じる)がある。
芽鱗には粉状の微毛があるか又は無毛。
・ 葉はやや革質で艶があり葉脈はあまり目立たない。
・ 低山地に普通。
------------------ マルバアオダモ
6: 小葉には明瞭な細鋸歯がある。
・ 若枝・葉柄・芽鱗には開出する粗毛がある,
又は無毛(アオダモ)。粉状の微毛はどこにもない。
・ 葉はやや草質で葉脈が凹む。
・ 山地帯で,ありふれてはいない。
----------------------- ケアオダモ
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2: 小葉は明らかに有柄(長さ3mm以上)。
3: 小葉は卵形~長楕円形で,急鋭頭又は急鋭尖頭。
・葉はやや紙質で薄く,葉脈は溝状に凹んで顕著。
-------------------------------------- トネリコ
3: 小葉は長楕円状披針形,尾状に長く鋭尖する。。
・葉はやや革質で厚みを感じる。葉脈はそんなに目立たない。
4: 小葉柄は長さ1cm以下。
------------------------------- ヤマトアオダモ
4: 小葉柄は長さ1~3cm。奄美大島以南に分布。
-------------------------------------- シマタゴ
『日本の樹木(初島住彦,1976)』の検索表を辿って,トネリコ属を確信できた。花がないと属の決定には不安が残るものだ。
× A:葉は不明またはやや不明。
○ A:明らかな葉を有する。
× B:鱗片葉・針葉・線形葉。…
○ B:葉は通常上記のように狭くなく,…
× C:葉は互生または束生。
○ C:葉は対生または輪生。
×:葉は単葉。
○:葉は複葉。
[複葉対生または輪生]
× 1:葉は掌状複葉で…
○ 1:葉は羽状複葉…
× 2:茎は多少つる性。
○ 2:茎はつる性でない。
× 3:葉は2回または3回羽状複葉。…
○ 3:葉は1回羽状複葉。
× 4:葉は多肉多汁,…
○ 4:以上と異なる。
× 5:小枝は四角形。…
○ 5:小枝は四角形でなく,…
× 6:葉は3個輪生。…
○ 6:葉は3個輪生でなく2個の対生。
× 7:小葉は全縁またはやや全縁。
○ 7:小葉は全縁でない。
× 8:小葉は3個。
○ 8:小葉は5個以上。落葉の高木~小高木。
× 9:小枝の髄は太い。
○ 9:小枝の髄は大きくない。
× 10:葉には托葉と小托葉があり,…
○ 10:葉には托葉も小托葉もなく,…
× 11:小葉は通常5個で通常欠刻があり…
---------------------- (カエデ属の一部)
○ 11:小葉は5個以上で欠刻はなく,…
------------------------------ トネリコ属
【追記】 2018.6.20
その後アオダモ類を意識しながら歩いていたら,似たものが次々出て来た。
そしてこれは,今まで自分が「ヤマトアオダモの一型(幼木)として認識していたもの」だと気付いた。
今回は,薄暗い林内のやや大きめの木であったために,その事が思い浮かばなかったようだ。
ヤマトアオダモの変異(生態)について,今回以下の記載を確認できた!やっと確信が持てたと言える。
「・・・小葉の円いものがあり,県内にもみられる・・・。若木では小葉の形は円くなり別種に見えることがあり・・・」 (神奈川県植物誌2001 長谷川義人,2001)
「・・・葉の形状は変異がいちじるしい。幼木では小葉の数が多い。冬芽は大きくて黄褐色の縮毛が多い。」 (落葉樹の葉 田中敬幾,2008)
しかし, “検索表” に正直に従えば必然的にトネリコと同定されてしまう(葉形のみを使って分けているので)。今回自分が間違えたように。まさに,図鑑類の不備だ!
トネリコ属で重要な手掛かりの一つとされる “冬芽” ,2種の区分で冬芽に言及している検索表が一つだけあった! (『Flora of Japan T. Yamazaki, 1993』)
上記検索表に以下を付け加えて補完したい。自分なりの表現で直訳ではないが・・・。
・ ヤマトアオダモ : 冬芽の芽鱗には黄褐色の縮毛が密生。
・ トネリコ : 冬芽の芽鱗は微毛または無毛。