アオタチカモメヅル Vincetoxicum glabrum f. viridescens
『隠岐島・島根半島・三瓶山』(丸山巌 昭35)には全く記載なし。『隠岐雑俎』(岡部武夫 昭24)にあるイヨカズラ V. japonicum は,本種を誤認したものであろう。
『島根県の種子植物相』(杉村喜則 2005)は,単に「隠岐島後」としか書いてない。ただし何故か,氏の『標本目録(Ⅰ),2009』には,「六日市町田野原 (1971)・西郷町津井ノ池 (1987)・邑智町君谷 (1993)」の3点が記録されている。なお,邑智町の標本は タチカモメヅル f. glabrum のものである。
いずれにしても,本種が島根県でごく稀なものであることは間違いないであろう。隠岐でも,津井の “男池” と “女池” ,そして都万の “ろんざの池” にしかない。あってもよさそうな “油井の池” では確認されていない。沢山ある溜池は,改修工事によって全てが単なる “水タンク” と化した。自然の植生が残る余地はない。沼や湿地はことごとく埋められ,水田も乾燥化した。
なお,隠岐のものはすべてアオタチカモメヅルで,花が“帯黄白色”である。3ヶ所とも個体数はかなり多く,広がりもある。本来はタチカモメヅル(花は暗紫色 f. glabrum)群集の中に稀に混じる程度で,出現数は少ないはずであるのに。遠く離れた産地で(男池・ろんざの池間は,直線距離でも10数km),しかもことごとくアオタチカモメヅル。これは興味深い。
タチカモメヅルの分布は,本州(近畿以西)・四国・九州,朝鮮半島南部。国内の状況は以下の通り。近畿以西の種なら,隠岐は余裕で “北限” になる。また,北限の種が一つ増えた。何ともはや北限植物が多い島だ。
(×:記録なし,●:RDB登載,△:少ない,○:記録あり)
滋賀 ●, 京都 ●, 兵庫 △, 大阪 ●, 奈良 ●, 和歌山 ●, 三重 ●
鳥取 ○, 島根 △, 山口 △, 岡山 ○, 広島 ○
香川 △, 愛媛 ●, 徳島 ●, 高知 ●
福岡 ●, 佐賀 △, 長崎 ×, 熊本 ●, 大分 ●, 宮崎 ●, 鹿児島 ●, 沖縄 ×
以下は “絶滅危惧Ⅰ類” の県から抜書き。
愛媛: 「皿ヶ嶺の竜神平湿原にのみ生育する。四国で唯一の生育地である。」
※ 愛媛県のみがアオタチカモメヅルを指定。
徳島: 「池田町で生育を確認した。山城町に記録がある。」
福岡: 「椎田町,新吉富村,大平村のため池各所のやや湿った草地に見られた。
近年,大平村の池尻の湿地で,花が黄緑色のアオタチカモメヅルととも
に本種を確認した。」
宮崎県・鹿児島県は “絶滅” となっている。
島根県では何故指定しないのか?隠岐にかなりあるとはいえ,わずか3ヶ所で湿地生。決して安泰ではないと思うが。
【補記】
アオタチカモメヅルにやや似たものとして,北関東付近(群馬・栃木・茨城・福島)に,オオアオカモメヅル V. nipponicum なるものが記録されている。情報が少なくて両種の関係はよく分らないが,中部地方の分布が抜けているのが不思議である。2つを同一種とする見解もある( “Flora of Japan” T. Yamazaki, 1993)。
『島根県の種子植物相』(杉村喜則 2005)は,単に「隠岐島後」としか書いてない。ただし何故か,氏の『標本目録(Ⅰ),2009』には,「六日市町田野原 (1971)・西郷町津井ノ池 (1987)・邑智町君谷 (1993)」の3点が記録されている。なお,邑智町の標本は タチカモメヅル f. glabrum のものである。
いずれにしても,本種が島根県でごく稀なものであることは間違いないであろう。隠岐でも,津井の “男池” と “女池” ,そして都万の “ろんざの池” にしかない。あってもよさそうな “油井の池” では確認されていない。沢山ある溜池は,改修工事によって全てが単なる “水タンク” と化した。自然の植生が残る余地はない。沼や湿地はことごとく埋められ,水田も乾燥化した。
なお,隠岐のものはすべてアオタチカモメヅルで,花が“帯黄白色”である。3ヶ所とも個体数はかなり多く,広がりもある。本来はタチカモメヅル(花は暗紫色 f. glabrum)群集の中に稀に混じる程度で,出現数は少ないはずであるのに。遠く離れた産地で(男池・ろんざの池間は,直線距離でも10数km),しかもことごとくアオタチカモメヅル。これは興味深い。
タチカモメヅルの分布は,本州(近畿以西)・四国・九州,朝鮮半島南部。国内の状況は以下の通り。近畿以西の種なら,隠岐は余裕で “北限” になる。また,北限の種が一つ増えた。何ともはや北限植物が多い島だ。
(×:記録なし,●:RDB登載,△:少ない,○:記録あり)
滋賀 ●, 京都 ●, 兵庫 △, 大阪 ●, 奈良 ●, 和歌山 ●, 三重 ●
鳥取 ○, 島根 △, 山口 △, 岡山 ○, 広島 ○
香川 △, 愛媛 ●, 徳島 ●, 高知 ●
福岡 ●, 佐賀 △, 長崎 ×, 熊本 ●, 大分 ●, 宮崎 ●, 鹿児島 ●, 沖縄 ×
以下は “絶滅危惧Ⅰ類” の県から抜書き。
愛媛: 「皿ヶ嶺の竜神平湿原にのみ生育する。四国で唯一の生育地である。」
※ 愛媛県のみがアオタチカモメヅルを指定。
徳島: 「池田町で生育を確認した。山城町に記録がある。」
福岡: 「椎田町,新吉富村,大平村のため池各所のやや湿った草地に見られた。
近年,大平村の池尻の湿地で,花が黄緑色のアオタチカモメヅルととも
に本種を確認した。」
宮崎県・鹿児島県は “絶滅” となっている。
島根県では何故指定しないのか?隠岐にかなりあるとはいえ,わずか3ヶ所で湿地生。決して安泰ではないと思うが。
【補記】
アオタチカモメヅルにやや似たものとして,北関東付近(群馬・栃木・茨城・福島)に,オオアオカモメヅル V. nipponicum なるものが記録されている。情報が少なくて両種の関係はよく分らないが,中部地方の分布が抜けているのが不思議である。2つを同一種とする見解もある( “Flora of Japan” T. Yamazaki, 1993)。