ネコノメソウ Chrysoplenium grayanum
分布は全国で特に珍しいものではないが,隠岐にとっては重要種である。この冬にまとめた『隠岐版レッドデータブック』では “絶滅危惧ⅠA類” とした。隠岐には何故少ないかはっきりしないが,多分高い山がないからであろう。隠岐と同緯度で隠岐より標高の低い千葉県を調べてみたら,案の定 “準絶滅危惧種” になっていた。
本種は「本来夏緑林帯のものであるが,照葉林帯 “にも” 生える」という。そうではあろうが,近くに高い山の控えている低地と,低地しかない地域では事情が異なるはずである。つまり,暑い夏が続いて低地で絶滅したらそれで終りになる地域と,その後にも低地へ送り出す供給基地(高地)が残っている地域との違いである。
30年ほど昔の話になるが,皆市から那久方面への林道沿いの谷筋に広大な群生地があった(峠近くで標高300m)。その後,林道の拡幅工事で生育地が消滅,最近までわずかに数本残っていたが,それも今は見られない。
何故1ヶ所だけなのか?気になっていたが,今回ついに海士町の中里地区で見付けた(2014.3.31)。1群落のみであるが,長さ2mほどの密な群生で元気が非常によい。以前から「ここのは何か違う」とぼんやり感じてはいたのだが,「まさかこんな低い場所(海抜60m)に」という思い込みが邪魔をした。気付いたからいいようなものの…。
何はともあれ,ありふれているヤマネコノメソウ C. japonicum と区別できなければ困る。今まで同じに見えていたが,図鑑を読んでみたら,そしてよく見てみたら,はっきり違うものだった。難しい点は何もない。一目で見分けられる。
ヤマネコノメソウ ⇒ ネコノメソウ
(1) 同定
・茎葉: 互生 ⇒ 対生
------ 茎に付く葉は少なく1(-2)枚 ⇒ 1-2対の対生葉がきちんとある
・雄蕊: 8本 ⇒ 4本
------ 時に6本程度のものも混じる ⇒ 常に4本
(2) 見かけ
・葉の形: 広い円形 ⇒ 広卵形
------ 葉先は円弧状で全く尖らず ⇒ 鈍頭ではあるが葉先は尖る
・葉の鋸歯: 幅広くて低い ⇒ 細かく数多い
------ 鈍形で切れ込みも目立たない ⇒ はっきりギザギザした本物の鋸歯
・苞葉の色: 淡黄緑 ⇒ 黄色味が強い(開花時)
------ あまり目立たない ⇒ 明るくてパッと目立つ(果期には褪める)
・群落: 小さな固まりが散在 ⇒ 密に群生してマット状に広がる
------ 連続的な大集団は作らない ⇒ 走出枝を出して広大な純群落を作る
(3) 環境
・環境: やや湿り気味 ⇒ 本当の湿地(別名ミズネコノメソウ)
------ 乾いた場所にも見られる ⇒ 常に水に濡れている(流水)場所
・標高: 照葉林帯・里・低山地 ⇒ ・夏緑林帯・山・主に高地(和名が逆)
------ 山麓の林縁・水田付近 ⇒ 里にも出るが本来は山地の渓流沿い
皆よく似ていて難しいネコノメソウ属(変種を含めて20数種)だが,この2つは変り者なので安心してよい。雄蕊は8本が基本数で,4本に限るのはネコノメソウだけ。また,茎葉が互生のものは,ヤマネコノメソウの他には,タチネコノメソウ・エゾネコノメソウ・ツルネコノメソウの3種のみ。ただ,ヤマネコノメソウが “互生” だと言われても,普通は茎の上の方に葉が1枚ポツンとあるだけ。確かに “対生” ではないのだが,面喰らう。
他に隠岐の記録があるのは以下の2種。分布上はこちらの方が価値が高い。
ホクリクネコノメ C. fauriei
分布は新潟県~島根県の日本海側。島根県は隠岐と島根半島が中心。県本土では稀なようだが隠岐には多い。ただし島前では,高崎山と焼火山でわずかに見られるのみ。
ボタンネコノメソウ C. kiotense
分布は長野県から~島根県の脊梁山地。島根県の産地は中国山地の岡山・広島との県境地帯。分布の中心は,岐阜県~近畿のようで北陸には産しない。隠岐で発見できれば貴重である。
隠岐の唯一の記録は,高尾暖地林の標本(杉村喜則,1972)のみ。本当かな~と思っていたが,『日本の固有植物(2011)』の分布図にも出ていて驚いた。早速本気で捜すことにする。
本種は「本来夏緑林帯のものであるが,照葉林帯 “にも” 生える」という。そうではあろうが,近くに高い山の控えている低地と,低地しかない地域では事情が異なるはずである。つまり,暑い夏が続いて低地で絶滅したらそれで終りになる地域と,その後にも低地へ送り出す供給基地(高地)が残っている地域との違いである。
30年ほど昔の話になるが,皆市から那久方面への林道沿いの谷筋に広大な群生地があった(峠近くで標高300m)。その後,林道の拡幅工事で生育地が消滅,最近までわずかに数本残っていたが,それも今は見られない。
何故1ヶ所だけなのか?気になっていたが,今回ついに海士町の中里地区で見付けた(2014.3.31)。1群落のみであるが,長さ2mほどの密な群生で元気が非常によい。以前から「ここのは何か違う」とぼんやり感じてはいたのだが,「まさかこんな低い場所(海抜60m)に」という思い込みが邪魔をした。気付いたからいいようなものの…。
何はともあれ,ありふれているヤマネコノメソウ C. japonicum と区別できなければ困る。今まで同じに見えていたが,図鑑を読んでみたら,そしてよく見てみたら,はっきり違うものだった。難しい点は何もない。一目で見分けられる。
ヤマネコノメソウ ⇒ ネコノメソウ
(1) 同定
・茎葉: 互生 ⇒ 対生
------ 茎に付く葉は少なく1(-2)枚 ⇒ 1-2対の対生葉がきちんとある
・雄蕊: 8本 ⇒ 4本
------ 時に6本程度のものも混じる ⇒ 常に4本
(2) 見かけ
・葉の形: 広い円形 ⇒ 広卵形
------ 葉先は円弧状で全く尖らず ⇒ 鈍頭ではあるが葉先は尖る
・葉の鋸歯: 幅広くて低い ⇒ 細かく数多い
------ 鈍形で切れ込みも目立たない ⇒ はっきりギザギザした本物の鋸歯
・苞葉の色: 淡黄緑 ⇒ 黄色味が強い(開花時)
------ あまり目立たない ⇒ 明るくてパッと目立つ(果期には褪める)
・群落: 小さな固まりが散在 ⇒ 密に群生してマット状に広がる
------ 連続的な大集団は作らない ⇒ 走出枝を出して広大な純群落を作る
(3) 環境
・環境: やや湿り気味 ⇒ 本当の湿地(別名ミズネコノメソウ)
------ 乾いた場所にも見られる ⇒ 常に水に濡れている(流水)場所
・標高: 照葉林帯・里・低山地 ⇒ ・夏緑林帯・山・主に高地(和名が逆)
------ 山麓の林縁・水田付近 ⇒ 里にも出るが本来は山地の渓流沿い
皆よく似ていて難しいネコノメソウ属(変種を含めて20数種)だが,この2つは変り者なので安心してよい。雄蕊は8本が基本数で,4本に限るのはネコノメソウだけ。また,茎葉が互生のものは,ヤマネコノメソウの他には,タチネコノメソウ・エゾネコノメソウ・ツルネコノメソウの3種のみ。ただ,ヤマネコノメソウが “互生” だと言われても,普通は茎の上の方に葉が1枚ポツンとあるだけ。確かに “対生” ではないのだが,面喰らう。
他に隠岐の記録があるのは以下の2種。分布上はこちらの方が価値が高い。
ホクリクネコノメ C. fauriei
分布は新潟県~島根県の日本海側。島根県は隠岐と島根半島が中心。県本土では稀なようだが隠岐には多い。ただし島前では,高崎山と焼火山でわずかに見られるのみ。
ボタンネコノメソウ C. kiotense
分布は長野県から~島根県の脊梁山地。島根県の産地は中国山地の岡山・広島との県境地帯。分布の中心は,岐阜県~近畿のようで北陸には産しない。隠岐で発見できれば貴重である。
隠岐の唯一の記録は,高尾暖地林の標本(杉村喜則,1972)のみ。本当かな~と思っていたが,『日本の固有植物(2011)』の分布図にも出ていて驚いた。早速本気で捜すことにする。