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オオタチヤナギ Salix pierotii

気に掛る点が幾つかあって,まだ同定は完結していない。現時点でこのように “自分は判断する” ,という意味での同定である。以下,平凡社図鑑(木村有香 1989)の「雌株の検索表」に従う。

◎ B.腺体は1個,まれに2個。
 …… ごく稀に小さな背腺体を持つ小花が混じることがある。「腺体が2個」が普通ではないし,「しばしば互いに側方で合着」することもない。

◎ C.高木である。
 …… 巨大なのが普通に見られるので,低木や “大低木” ではない。

◎ D.枝は斜上する
 …… 枝は下垂しない。つまり,シダレヤナギ・ウンリュウヤナギではない。

◎ E.苞は淡黄色~淡黄緑色で,両面の下半部または基部付近に毛があるが,しばしば無毛となる。
 …… 数多くの個体をチェックしたが,苞の上部が色付くものは全くなかった。「両面に長軟毛が密生する」感じでもない。多少の変化はあるもののとても “密生” とは言えない。

◎ F.子房は無柄またはほとんど無柄。柱頭は線形または倒卵形で外曲する。
 …… 子房は無柄で,柄が長く(約1.5mmで腺体の約倍長)はない。

◎ G.花柱はやや長く,子房の半長またはそれ以上ある。子房の全面に白軟毛が密生する。
 …… ここはややスッキリしない部分である。花柱が “ある” のは明瞭で「やや長く」も感じるが,「子房の半長」には達しないことが多い。ただ,子房は成長して伸びるので,柱頭が黒変しない(黄色い)内に観察すること。

しかし,反対の選択肢「G.花柱は短い」を選ぶと,子房の全面に白軟毛が密生することからシロヤナギということになる。ただ「雌花穂の長さ約3cm,径4-5mm」というのは長細すぎる。最大でも実測値は「長さ:2cm,径:9mm」で丸っこい感じ。このサイズはオオタチヤナギの記載とピタリと一致する。それにシロヤナギの花柱は,ほとんど “ない” ように思われる。

 H.柱頭は長さ0.4-0.6mmで花柱より短い --------------- オオタチヤナギ
 H.柱頭は花柱と同長で長さ約0.7mm ------------------- ヨシノヤナギ
 …… ここはどちらか判断できない。 “柱頭の長さ” はどこを測るかはっきりしないし,計測値の差も微妙すぎる。雌花の形質だけを使うのでこうなったのであろう。葉の特徴を使ってヨシノヤナギを排除する。

ヨシノヤナギの成葉は,
(1) 長さ4-8cm,幅1-2cm。
 …… オオタチヤナギは,長さ9-12cm,幅1.2-3.0cm。明らかにこちらである。ヨシノヤナギは葉が小さいのが特徴だという。
(2) 裏面は淡緑色。
 …… 過去の記憶では,裏面が全て粉白を帯びていて “淡緑” とは言えない。山と谿谷社の「樹に咲く花」(吉山寛 2000)には,「葉裏が光沢のある緑色なのが特徴」となっている。

今後の予定。
(1) オオタチヤナギは,雄花があれば簡単・明瞭な同定ができるので是非とも雄木を見付けたい。今年になって,島後・海士・西ノ島の3島をかなり見て歩いたが雌木ばかり!ヤナギ類は何故か雌木の方が多いのだという。

(2) よく似ていてかつては混同されていたジャヤナギ S. eriocarpa を捜すこと。隠岐の記録はあるが,古いものは信用できない。

(3) オオタチヤナギ?の果実がちゃんと成熟するかも確かめておきたい。ジャヤナギの雌花は「成熟しないで落ちる」(長谷川義人 2003)そうである。日本には雄木がないためであろうか。

(4) ジャヤナギとの区別,花がないと分らないでは困るので,葉の比較もしておきたい。難しそうな気はするが全く同じということもないであろう。同時に,シロヤナギとヨシノヤナギの否定も。

(5) 今回の雌花の観察で気になって仕方がない事がある。腹腺体の先端がしばしば “凹頭(時に中裂)” になるのだが,その点に触れた文献を見ない。図版類にもそのようにはなってはいない。著しい特徴であると思うし(通常は鈍頭?),隠岐だけの地域変異とも思えないのだが…。

         [⇒ オオタチヤナギ その後]

ヤナギ類 同定事始め

  さん

雑然とした記事になりました。中間報告にもなっていません。隠岐以外の人には叱られそうですね。

ヤナギはサクラのように, “葉が展開する前に花の咲く” グループと, “葉の展開と開花がほとんど同時” のグループの2つに分かれます(マルバヤナギ1種のみ花が葉の展開後)。前者の早咲グループは今(3月下旬)が観察適期ですが,後者の方はまだ花穂が頭を出すか出さないかの状態で,4月上旬にならないと雄蕊・雌蕊とも成熟しません。つまりまだ十分な観察ができません。以下に書いたことは半分以上推測です。今年はヤナギをものにしてやろうと気が焦っていけません。

Ⅰ。自生種
過去の記録によると隠岐に自生するヤナギは以下の5種です。これ以外のものが見付かれば “新発見” というわけです。

 〔普通種〕
★ ネコヤナギ -------- 3/12に銚子川,3/19には八尾川を下流から上西神社までと,近石川を見て歩きました。川の中州に幾らでもあります。島前には何故ないんでしょう。水量豊富な大きな川がないためだと思いました。また,市街地付近ばかりで山の中にないのは,ヤナギが流れ近くの陽樹だからでしょう。山地はどうしても他の樹木に被われます。

川の中のものは,全て株立ちして下部が這うようなタイプです。役場近くの湿地(元水田?)だけに,高さ3m程度に立上がる大きいのが群生していました。ネコヤナギにはこの2型があるそうですが,単に環境条件による生態差かもしれません。

“猫の尻尾” が意外に小さく,銀白色とはいうものの黒ずんで地味(雌花はなお更),私のイメージとは違っていました。花屋さんでネコヤナギの名で売っているのはフリソデヤナギかもしれません。こちらの方がネコヤナギらしく感じます。

雄木と雌木の量の比が気になっていたのですが,当然ながら1:1で人間と同じでした。混生したり直ぐ近くにあったりします。これも当然,離れていては生殖に支障を来すでしょう。小さい虫は余り遠い距離を飛回らないそうです(虫媒花)。

★ オオタチヤナギ -------- ネコヤナギに混じって,まだ芽の伸び出していないヤナギがポツンポツンと立っています。皆若木ですが分布範囲は広い。この1本が本種♀でした。♂♀はどうあれこの川筋のものは皆同種だと思います。今日海士の溜池で採ったものも同一物でした。隠岐のヤナギはほとんどこれなんではないか(ネコヤナギ以外),という厭な予感が当りそうです。

 〔やや稀〕
★ ジャヤナギ -------- 日本には雌木しかなく, “大陸より渡来” と考えられています。しかし何のために日本中に植えたんでしょう。あるいは帰化でしょうか。♂がないので種子はできないんですが。枝がポロポロ簡単に折れて広がるようです。

昔,西ノ島(耳々浦)で見ています。最近少なくなっている種だそうですが,耳々浦にはまだ残っています。来週,真っ先にこれを確認に行って来ます。オオタチヤナギとの区別はどうするんだと悩んだのですが,花があればはっきり区別できることに気付きました。そして,ヤナギは余程の若木か徒長枝ででもない限り必ず(?)花を着けます。

なお,昔ジャヤナギと同定できたのは,ジャヤナギとオオタチヤナギとが区別されていなかったからです(同一種の扱い)。

 〔ごく稀〕
★ カワヤナギ -------- 丸山・岡部両氏の目録にもありますが,古くてそれ以後の環境の改変がひど過ぎます。杉村先生の標本は「日ノ津(1983.5.26),古海(1992.8.?)」ですが,両所とも行って見る気にもなりません。ヤナギの生えるような環境がなくなっています。三面張りで舗装道路。どこかに昔ながらの小川が残っていないでしょうか?いわゆる隠岐方言のカーラ(川原)ですが,今や貴重な文化財(天然記念物)になりました。

★ タチヤナギ -------- 杉村先生の “標本目録” に,「東郷(1986.5.9)」があるのみです。行っては見ますが30年前の樹はもう残ってないでしょう。ヤナギは急速に数を減らしています。河川改修・道路整備・圃場整備・宅地造成・湿地埋立・…。生育環境が低湿地の陽地で,人間の生活圏と一緒なのが不運でした。

Ⅱ。栽培種
イヌコリヤナギ -------- 八尾川河川敷(雨来)に,♂:2,♀:1ヶ所の群生があります。本種は自生があっても不思議ではないのですが,以下の理由から植栽されたものと考えます。雄木は花材で,海士にも植えた人がいますが,雌木も植えるんでしょうね。苗は売ってるのかな?
 (1) 近くに人家があって,階段で中州に下りられる。
 (2) 付近の田圃の畦にもウンリュウヤナギと並んで植っていた。
 (3) 雌木の上部を剪定鋏で切りとった跡があった。
 (4) 一目で分るほど目立つ種なのに,過去の記録が一切ない。
 (5) 1地点でしか見ていない(今のところ)。

コリヤナギ(韓国原産) -------- 柳行李の材料です。昔の記録はありますし,私も見たことがありますが,もう残ってないでしょう。
シダレヤナギ(中国原産) -------- お馴染みの最も柳らしい柳です。
ウンリュウヤナギ(中国原産) -------- 庭木や花材。枝が(葉も)細くよじれて垂れる。
フリソデヤナギ(雑種 ネコヤナギ×バッコヤナギ) -------- 雄花の花穂は太く長く,銀白色で見事。枝や冬芽が真っ赤なのも特徴。苗木店で売っている。

Ⅲ。未同定種
3年前から私がオノエヤナギだと言っていたものです。花と葉が “同時性” なのでオノエヤナギ(花が先)でないことは確実です。これだから素人の言うことは信用できません。同定時期が遅かったので花期を誤ったのでしょう。雄蕊・雌蕊も老化して毛が落ちていたようです。

“雄木” なのでジャヤナギではあり得ません。 “苞に長白毛がない” のでオオタチヤナギでもありません。じゃあ何か?雄花が成熟する一週間後が楽しみです。

もう一つ変なものがあります。これは西日本初のシロヤナギでは?と興奮していたものです。昨年暮れに2本だけ発見。異常に細く小さい葉を茂らせていたのですが,先日行ってみたら枯死が必至の状態でした。もう時間の問題です。大枝は全て枯れ(バキンと折れる),僅かに幹から弱々しい徒長枝が芽吹いているだけです。花はもちろん,まともに育った葉が見られるかどうか?絶滅を座して待つのは気が咎めるので,挿木をしてみる積りです。

Ⅳ。不明種
これは,杉村先生が「Salix sp. (中里~福井)1983.5.27」としているものです。この時季なら花を見ている可能性が大ですが…?ただ当時はまだ平凡社の図鑑が刊行されておらず,同定が非常に難しかった時代です(花♂・♀と成葉,3者のセットが必要)。これは今年徹底的に当ってみる積りです。と言っても数本しか残っていないので簡単です。まさか雑種ではないと思いますが…。雑種はできるけど “稀” と言われています。


 【追記 2013.3.30】
ネコヤナギの雄木と雌木の量の比(性比)について,「当然ながら1:1」と書きましたがこれは問題があります。

「ヤナギ属の多くは雌に偏った性比を持つ」ことが多くの研究により報告されているそうです。そして,何故そうなるのかはまだ明らかになっていないらしい。更に,一般に「雌雄異株の高木類では,雄の方が個体数が多い」とも言われているようです。

ネコヤナギの雄が普通に見られたのは,ヤナギ類では例外なのかもしれません。今調べているオオタチヤナギ(?)では,雌木ばかり出て来て不思議に思っています。

 【追記 2013.4.8】
「シロヤナギでは?」と書いたもの,これはオオタチヤナギの雌株でした。信じられません。葉は細長くて小形,オオタチヤナギの半分くらいでしたが…。「枯死が必至」も勘違いでした。枯れているのは下方の大枝だけで,幹自体と上部の枝は生きています。下の枝が枯れたのは水没の影響かもしれません。

 【追記 2013.5.13】
「シロヤナギでは?」と書いたもの,やはりシロヤナギの可能性が大です。まだ,ヨシノヤナギ S. yoshinoi を否定し切れていませんが,少なくともオオタチヤナギでないことは確実です。

ヤナギ属の検索表 (隠岐版)

平凡社の図鑑(木村有香 1989)のものを, “隠岐用” に編集した。取上げる種は隠岐に自生する種(現状確認可能な種)に限るべきであるが,実態がよく分らないので可能性がゼロでないものは含めた。いずれ,もっと簡潔で使い易いものに直したい。   ※ 「¦」 マーク以下は原文を省略。

 ■■ 雄株による検索 ■■
A.側芽の鱗片は反軸側で合着するが,向軸側では合着せず,縁が重なり合う。
   --------------------------------------------------- マルバヤナギ
A.側芽の鱗片は向軸・反軸側とも合着して深い帽状となる。
 B.腺体は2個(腹腺体と背腺体)ある。
  C.雄蕊は3個ある。 ------------------------------------- タチヤナギ
  C.雄蕊は2個ある。
   D.匍匐性の矮小低木で,北海道の高山に生育する。¦
   D.高木または低木。
    E.枝は斜上する。
     F.葯は紅色,花糸は中部以下で種々の高さまで合着する。
       花穂は長さ1-2.5cmで, ほとんど無柄 ------------ オオタチヤナギ
     F.葯は黄色,花糸は離生する。
      G.成葉は裏面が淡緑色。花穂は長さ2-3cm ---------- ヨシノヤナギ
      G.成葉は裏面が灰青色。
       H.花穂は長さ2.5-4.5cm。成葉は長楕円状披針形で,長さ5-11cm,
         幅1-2cm ------------------------------------- シロヤナギ
       H.花穂は長さ1.5-2.0cm。成葉は狭長楕円状披針形で,
         長さ4-7cm,幅0.9-1.2cm ----------------------- コゴメヤナギ
    E.枝は下垂する。
     F.枝はまっすぐに枝垂れる ------------------------- シダレヤナギ
     F.枝は蛇状に屈曲したり,ねじれたりする。 -------- ウンリュウヤナギ
 B.腺体は1個(腹腺体)ある。
  C.雄蕊は2個ある。
   D.花糸は離生する。
    E.高木である。
     F.成葉は裏面に毛がある。枝端の若葉は先端部を除き縁が裏側に巻く。
      G.成葉は楕円形~長楕円形で,長さ8-13cm,幅3.5-4.0cm,
        裏面に白色の縮毛が密生する。 ---------------- ヤマネコヤナギ
      G.成葉は狭披針形~楕円状披針形で,長さ10-20cm,幅1-2cm,
        裏面に直毛がある。
       H.成葉の裏面に短い伏毛が散生する。苞は長楕円形で,鈍頭ないし
         円頭,下から約1/3の所でややくびれる ---------- オノエヤナギ
       H.成葉の裏面には主脈にほぼ平行する白色の長い伏毛が密生し,
         銀白色を呈する。 --------------- キヌヤナギ・エゾノキヌヤナギ
     F.成葉は両面ともに無毛で,若葉の縁は巻かない。北海道産。¦
    E.低木である。
     F.山地や低地に生育する小低木または大低木。
      G.苞は上半部は黒色または黒褐色で,下半部が淡黄緑色である。
        裸材に隆起線がある。
       H.高さ5mになる。前年生の枝は無毛。¦
       H.高さ0.2-3mになる。前年生の枝にふつう残毛がある。
        I.高さ20-70cmの低木。成葉は普通長楕円形で小さく,
          長さ1.5-3cm。--------------------------------- ノヤナギ
        I.高さ0.5-2mの低木。成葉は長楕円形,長さ5-20cm。
          ------------------- サイコクキツネヤナギ・オオキツネヤナギ
      G.苞は淡黄緑色で,または時に上端部が褐色を帯びるものが
         混生する。¦
     F.高山に生育する匍匐性の小低木。¦
   D.花糸は全長にわたり合着する。苞の上部は黒色である。
    E.花糸は下部に毛がある。成葉は両面とも無毛である。
     F.成葉はふつう対生,またはやや対生,あるいは互生する。
      G.成葉は長楕円形で円頭ないし鋭頭。 ------------- イヌコリヤナギ
      G.成葉は線形で鋭頭。 ----------------------------- コリヤナギ
     F.成葉は常に互生する。枝端の若葉は先端部を除き縁は裏側に巻き,
       両面に白色軟毛があるが,やがて無毛となる。 --------- カワヤナギ
    E.花糸は無毛である。
     F.低木で高さ3m。枝は叢生し,成葉は長楕円形で鋭頭。 --- ネコヤナギ
     F.高木で高さ約14mに達する。¦
  C.雄蕊は1個または2個で,同一花穂内でしばしば混在する。花糸は離生,
    または種々の高さまで合着する ------------------------- ヤマヤナギ

 ■■ 雌株による検索 ■■
A.側芽の鱗片は反軸側で合着するが,向軸側では合着せず,縁が重なり合う。
    ---------------------------------------------------- マルバヤナギ
A.側芽の鱗片は向軸・反軸側とも合着し,深い帽状となる。
 B.腺体は2個。腹腺体は卵形で,背腺体とふつう側方で合着する。花穂は
   楕円形で長さ1.5cm。子房は無柄で白毛が密生し,長さ約2mm。花柱は
   やや長く,子房の約半長。柱頭は長く,外曲する ------------- ジャヤナギ
 B.腺体は1個,まれに2個。
  C.高木である。 *1
   D.枝は下垂する。 -------------------- シダレヤナギ・ウンリュウヤナギ
   D.枝は斜上する。
    E.苞は淡黄色~淡黄緑色で,両面の下半部または基部付近に毛があるが,
      しばしば無毛となる。
     F.子房は無柄またはほとんど無柄。柱頭は線形または倒卵形で
        外曲する。
      G.花柱はやや長く,子房の半長またはそれ以上ある。子房の全面に
        白軟毛が密生する。  *2
       H.柱頭は長さ0.4-0.6mmで花柱より短い --------- オオタチヤナギ
       H.柱頭は花柱と同長で長さ約0.7mm -------------- ヨシノヤナギ
      G.花柱はごく短いか欠く。
       H.花穂は長さ約3cm。子房は全面に白軟毛が
          密生する ------------------------------------ シロヤナギ
       H.花穂は長さ1-2cm。子房は基部にわずかに毛があるか,
         または全面無毛 ----------------------------- コゴメヤナギ
     F.子房の柄は長く,約1.5mm長で腺体の約倍長。柱頭は短く,凹頭
        または軽く2浅裂し外曲しない ---------------------- タチヤナギ
    E.苞の上半部は黒色,褐色あるいは暗褐色を呈し,両面に長軟毛が密生。
     F.子房の全面に白色の短毛が密生する。枝端の若葉は先端部を除き,
        縁が裏側に巻く。
      G.花柱はごく短い。子房の柄は長さ2-3mm。腺体は短く,卵形で切頭
          ---------------------------------------- ヤマネコヤナギ
      G.花柱は長い。腺体は線形で切頭。子房の柄は腺体と同長
        あるいは短く,有毛で,長さ約1mm。花柱は子房と同長
          ------------------------------------------ オノエヤナギ
     F.子房は無毛で柄がある。¦
  C.低木である。  *3
   D.高山帯のみに生育する匍匐性の矮小低木。¦
   D.高山帯以外に生育する小低木または大低木。
    E.苞の上部は黒色または黒褐色で,両面有毛。
     F.花穂は同一個体で対生またはやや対生,あるいは互生し,
       葉より先に現れる。
      G.花穂は長さ0.8-1.0cm。 ---------- ノヤナギ
      G.花穂は長さ1.5-3.0cm。 ---------- イヌコリヤナギ・コリヤナギ
     F.花穂は常に互生する。
      G.子房は無毛で柄がある。苞の両面に鉄錆色の毛をしくか,あるいは
        鉄錆色と白色の毛とが混生する。 ------- サイコクキツネヤナギ
      G.子房は有毛。苞の両面に白色の長軟毛がある。
       H.枝端の若葉は先端部を除き縁が裏側に巻く。 ------ カワヤナギ
       H.枝端若葉は縁が巻かない。
        I.花柱はよく発達し,長さ2.5-3.0mm。 ------------- ネコヤナギ
        I.花柱は短く,長さ0.5-1.2mm。 ------------- オオキツネヤナギ
    E.苞は淡黄緑色であるが,しばしば上部が帯褐色~黒色のものが
      混生する。柱頭は短く,凹頭ないし2浅裂。 ----------- ヤマヤナギ

  【註】
  *1: タチヤナギの若木(株立ち)は大低木に見える。
  *2: ヨシノヤナギがほぼ“半長”,“それ以上” はオオタチヤナギを意味する
    のであろうが,ヨシノヤナギについては変化がありそうである。
    保育社の原色図鑑でも,本文では半長弱であるが図版は全然違う。
    『Flora of Japan』(H. Ohashi, 2006)では,1/3長以下になっている。
     ・ヨシノヤナギ ----- 子房:±3mm,花柱:0.5-0.8mm
     ・オオタチヤナギ ----- 子房 1.2-2mm,花柱 ±1mm
  *3: 樹高3m以下。但し,カワヤナギとヤマヤナギは例外(小高木)。 

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隠岐のヤナギは?

目の前に現物が色々あるのに,名前がサッパリ分らないのがヤナギの仲間。「難しい,無理そう…」と,一度も真剣に調べたことがなかったためだ。しかしもう,グズグズ言って後に伸ばしておられる歳でもない。ヤナギに負けたまま終るのは情けないだろう。来年は本気で取り組むことに決めた。

ヤナギ属 Salix には30を越える種があるが,隠岐に関係がありそうなのはそう多くない。取りあえず,隠岐を含む島根県の “普通種” を抜き出してみた(杉村喜則氏の記録による)。来春に備えて予習するためである。ただし分り易いと思われる,ネコヤナギ・マルバヤナギ・シダレヤナギは省略。

 1. オオタチヤナギ S. pierotii
 2. ジャヤナギ S. eriocarpa
 3. タチヤナギ S. triandra
 4. オノエヤナギ S. udensis
 5. カワヤナギ S. miyabeana ssp. gymnolepis

容疑者はこの5名,これなら一つずつチェックして行けば何とかなりそうな気もする。もしこれらにピッタリしないようであれば(島根県で稀産),なおさら元気も出るだろうし。

しかし年末になって海士町で目にしたものは,次のいずれかの可能性がある。杉村氏の記録にはないが,これも勉強しておいた方がよいだろう。どうも今まで見たことがないほど “葉が細くて小さい” 。
 ・ シロヤナギ S. dolichostyla ssp. dolichostyla
 ・ コゴメヤナギ S. dolichostyla ssp. serissaefolia

コゴメヤナギは中国地方ではごく稀(四国・九州はなし)。シロヤナギに至っては西日本の記録がない。そして困ったことに,シロヤナギにより近いような気がする。隠岐の緯度からいえば不可能とは言えないものの,見事に外れる確率の方が高そう。

隠岐では多いはずのオオタチヤナギが,昔の記録は出て来ないし,かつて名前を聞いた記憶もない。不思議に思って保育社の『原色図鑑』を見たらジャヤナギと同一視されていた。『日本植物誌』には学名すら載ってない。オオタチヤナギがはっきり認識されたのは,どうも平凡社の図鑑の記述からのようだ(木村有香 1989)。木村博士はヤナギ類の分類を完成させた大家。

かつては,雄花と雌花が揃わないとヤナギ属の検索はできないことになっていた。これがヤナギ属を敬遠した大きな理由である。そもそも,雄株と雌株が同一種であることをどうやって確かめるんだなどと思ったものだ。雄と雌が別の種だったりしたら目も当てられない。その後,平凡社図鑑に2種の検索表(雄株だけ用・雌株だけ用)が掲載されていることを知って,素人でも何とかなるかもしれないと大いに喜んだ。

更に『神奈川県植物誌2001』には,長谷川義人氏による「枝葉による検索・雄花によるキー・雌花によるキー」の3つの検索表があった。花がなくても同定できる可能性が出て来た訳だ。本書には,雄花・雌花・葉形の図が豊富にあって,種類は神奈川県産に限られているが非常に勉強になる。

そして極めつけは,誰でもアクセスできる山口純一氏のウェブサイト『日本の野生植物検索表』。 “葉・雄花・雌花” それぞれの検索表は,独自の検証結果も織り込み詳細を極めたもので,スゴイとしか言いようがない。
 http://homepage2.nifty.com/syokubutu-kensaku/yanagika00.html

垂れ込めていた暗雲に光が射して,ヤナギが分りそうな気がして来た。一年後が楽しみである。


 【注】 2013.4.2
『日本植物誌』にあるコウライヤナギ S. koreensis が,オオタチヤナギ S. pierotii の異名(シノニム)であった。

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プロフィール

T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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