ヤナギ属の検索表 (隠岐版)
平凡社の図鑑(木村有香 1989)のものを, “隠岐用” に編集した。取上げる種は隠岐に自生する種(現状確認可能な種)に限るべきであるが,実態がよく分らないので可能性がゼロでないものは含めた。いずれ,もっと簡潔で使い易いものに直したい。 ※ 「¦」 マーク以下は原文を省略。
■■ 雄株による検索 ■■
A.側芽の鱗片は反軸側で合着するが,向軸側では合着せず,縁が重なり合う。
--------------------------------------------------- マルバヤナギ
A.側芽の鱗片は向軸・反軸側とも合着して深い帽状となる。
B.腺体は2個(腹腺体と背腺体)ある。
C.雄蕊は3個ある。 ------------------------------------- タチヤナギ
C.雄蕊は2個ある。
D.匍匐性の矮小低木で,北海道の高山に生育する。¦
D.高木または低木。
E.枝は斜上する。
F.葯は紅色,花糸は中部以下で種々の高さまで合着する。
花穂は長さ1-2.5cmで, ほとんど無柄 ------------ オオタチヤナギ
F.葯は黄色,花糸は離生する。
G.成葉は裏面が淡緑色。花穂は長さ2-3cm ---------- ヨシノヤナギ
G.成葉は裏面が灰青色。
H.花穂は長さ2.5-4.5cm。成葉は長楕円状披針形で,長さ5-11cm,
幅1-2cm ------------------------------------- シロヤナギ
H.花穂は長さ1.5-2.0cm。成葉は狭長楕円状披針形で,
長さ4-7cm,幅0.9-1.2cm ----------------------- コゴメヤナギ
E.枝は下垂する。
F.枝はまっすぐに枝垂れる ------------------------- シダレヤナギ
F.枝は蛇状に屈曲したり,ねじれたりする。 -------- ウンリュウヤナギ
B.腺体は1個(腹腺体)ある。
C.雄蕊は2個ある。
D.花糸は離生する。
E.高木である。
F.成葉は裏面に毛がある。枝端の若葉は先端部を除き縁が裏側に巻く。
G.成葉は楕円形~長楕円形で,長さ8-13cm,幅3.5-4.0cm,
裏面に白色の縮毛が密生する。 ---------------- ヤマネコヤナギ
G.成葉は狭披針形~楕円状披針形で,長さ10-20cm,幅1-2cm,
裏面に直毛がある。
H.成葉の裏面に短い伏毛が散生する。苞は長楕円形で,鈍頭ないし
円頭,下から約1/3の所でややくびれる ---------- オノエヤナギ
H.成葉の裏面には主脈にほぼ平行する白色の長い伏毛が密生し,
銀白色を呈する。 --------------- キヌヤナギ・エゾノキヌヤナギ
F.成葉は両面ともに無毛で,若葉の縁は巻かない。北海道産。¦
E.低木である。
F.山地や低地に生育する小低木または大低木。
G.苞は上半部は黒色または黒褐色で,下半部が淡黄緑色である。
裸材に隆起線がある。
H.高さ5mになる。前年生の枝は無毛。¦
H.高さ0.2-3mになる。前年生の枝にふつう残毛がある。
I.高さ20-70cmの低木。成葉は普通長楕円形で小さく,
長さ1.5-3cm。--------------------------------- ノヤナギ
I.高さ0.5-2mの低木。成葉は長楕円形,長さ5-20cm。
------------------- サイコクキツネヤナギ・オオキツネヤナギ
G.苞は淡黄緑色で,または時に上端部が褐色を帯びるものが
混生する。¦
F.高山に生育する匍匐性の小低木。¦
D.花糸は全長にわたり合着する。苞の上部は黒色である。
E.花糸は下部に毛がある。成葉は両面とも無毛である。
F.成葉はふつう対生,またはやや対生,あるいは互生する。
G.成葉は長楕円形で円頭ないし鋭頭。 ------------- イヌコリヤナギ
G.成葉は線形で鋭頭。 ----------------------------- コリヤナギ
F.成葉は常に互生する。枝端の若葉は先端部を除き縁は裏側に巻き,
両面に白色軟毛があるが,やがて無毛となる。 --------- カワヤナギ
E.花糸は無毛である。
F.低木で高さ3m。枝は叢生し,成葉は長楕円形で鋭頭。 --- ネコヤナギ
F.高木で高さ約14mに達する。¦
C.雄蕊は1個または2個で,同一花穂内でしばしば混在する。花糸は離生,
または種々の高さまで合着する ------------------------- ヤマヤナギ
■■ 雌株による検索 ■■
A.側芽の鱗片は反軸側で合着するが,向軸側では合着せず,縁が重なり合う。
---------------------------------------------------- マルバヤナギ
A.側芽の鱗片は向軸・反軸側とも合着し,深い帽状となる。
B.腺体は2個。腹腺体は卵形で,背腺体とふつう側方で合着する。花穂は
楕円形で長さ1.5cm。子房は無柄で白毛が密生し,長さ約2mm。花柱は
やや長く,子房の約半長。柱頭は長く,外曲する ------------- ジャヤナギ
B.腺体は1個,まれに2個。
C.高木である。 *1
D.枝は下垂する。 -------------------- シダレヤナギ・ウンリュウヤナギ
D.枝は斜上する。
E.苞は淡黄色~淡黄緑色で,両面の下半部または基部付近に毛があるが,
しばしば無毛となる。
F.子房は無柄またはほとんど無柄。柱頭は線形または倒卵形で
外曲する。
G.花柱はやや長く,子房の半長またはそれ以上ある。子房の全面に
白軟毛が密生する。 *2
H.柱頭は長さ0.4-0.6mmで花柱より短い --------- オオタチヤナギ
H.柱頭は花柱と同長で長さ約0.7mm -------------- ヨシノヤナギ
G.花柱はごく短いか欠く。
H.花穂は長さ約3cm。子房は全面に白軟毛が
密生する ------------------------------------ シロヤナギ
H.花穂は長さ1-2cm。子房は基部にわずかに毛があるか,
または全面無毛 ----------------------------- コゴメヤナギ
F.子房の柄は長く,約1.5mm長で腺体の約倍長。柱頭は短く,凹頭
または軽く2浅裂し外曲しない ---------------------- タチヤナギ
E.苞の上半部は黒色,褐色あるいは暗褐色を呈し,両面に長軟毛が密生。
F.子房の全面に白色の短毛が密生する。枝端の若葉は先端部を除き,
縁が裏側に巻く。
G.花柱はごく短い。子房の柄は長さ2-3mm。腺体は短く,卵形で切頭
---------------------------------------- ヤマネコヤナギ
G.花柱は長い。腺体は線形で切頭。子房の柄は腺体と同長
あるいは短く,有毛で,長さ約1mm。花柱は子房と同長
------------------------------------------ オノエヤナギ
F.子房は無毛で柄がある。¦
C.低木である。 *3
D.高山帯のみに生育する匍匐性の矮小低木。¦
D.高山帯以外に生育する小低木または大低木。
E.苞の上部は黒色または黒褐色で,両面有毛。
F.花穂は同一個体で対生またはやや対生,あるいは互生し,
葉より先に現れる。
G.花穂は長さ0.8-1.0cm。 ---------- ノヤナギ
G.花穂は長さ1.5-3.0cm。 ---------- イヌコリヤナギ・コリヤナギ
F.花穂は常に互生する。
G.子房は無毛で柄がある。苞の両面に鉄錆色の毛をしくか,あるいは
鉄錆色と白色の毛とが混生する。 ------- サイコクキツネヤナギ
G.子房は有毛。苞の両面に白色の長軟毛がある。
H.枝端の若葉は先端部を除き縁が裏側に巻く。 ------ カワヤナギ
H.枝端若葉は縁が巻かない。
I.花柱はよく発達し,長さ2.5-3.0mm。 ------------- ネコヤナギ
I.花柱は短く,長さ0.5-1.2mm。 ------------- オオキツネヤナギ
E.苞は淡黄緑色であるが,しばしば上部が帯褐色~黒色のものが
混生する。柱頭は短く,凹頭ないし2浅裂。 ----------- ヤマヤナギ
【註】
*1: タチヤナギの若木(株立ち)は大低木に見える。
*2: ヨシノヤナギがほぼ“半長”,“それ以上” はオオタチヤナギを意味する
のであろうが,ヨシノヤナギについては変化がありそうである。
保育社の原色図鑑でも,本文では半長弱であるが図版は全然違う。
『Flora of Japan』(H. Ohashi, 2006)では,1/3長以下になっている。
・ヨシノヤナギ ----- 子房:±3mm,花柱:0.5-0.8mm
・オオタチヤナギ ----- 子房 1.2-2mm,花柱 ±1mm
*3: 樹高3m以下。但し,カワヤナギとヤマヤナギは例外(小高木)。
■■ 雄株による検索 ■■
A.側芽の鱗片は反軸側で合着するが,向軸側では合着せず,縁が重なり合う。
--------------------------------------------------- マルバヤナギ
A.側芽の鱗片は向軸・反軸側とも合着して深い帽状となる。
B.腺体は2個(腹腺体と背腺体)ある。
C.雄蕊は3個ある。 ------------------------------------- タチヤナギ
C.雄蕊は2個ある。
D.匍匐性の矮小低木で,北海道の高山に生育する。¦
D.高木または低木。
E.枝は斜上する。
F.葯は紅色,花糸は中部以下で種々の高さまで合着する。
花穂は長さ1-2.5cmで, ほとんど無柄 ------------ オオタチヤナギ
F.葯は黄色,花糸は離生する。
G.成葉は裏面が淡緑色。花穂は長さ2-3cm ---------- ヨシノヤナギ
G.成葉は裏面が灰青色。
H.花穂は長さ2.5-4.5cm。成葉は長楕円状披針形で,長さ5-11cm,
幅1-2cm ------------------------------------- シロヤナギ
H.花穂は長さ1.5-2.0cm。成葉は狭長楕円状披針形で,
長さ4-7cm,幅0.9-1.2cm ----------------------- コゴメヤナギ
E.枝は下垂する。
F.枝はまっすぐに枝垂れる ------------------------- シダレヤナギ
F.枝は蛇状に屈曲したり,ねじれたりする。 -------- ウンリュウヤナギ
B.腺体は1個(腹腺体)ある。
C.雄蕊は2個ある。
D.花糸は離生する。
E.高木である。
F.成葉は裏面に毛がある。枝端の若葉は先端部を除き縁が裏側に巻く。
G.成葉は楕円形~長楕円形で,長さ8-13cm,幅3.5-4.0cm,
裏面に白色の縮毛が密生する。 ---------------- ヤマネコヤナギ
G.成葉は狭披針形~楕円状披針形で,長さ10-20cm,幅1-2cm,
裏面に直毛がある。
H.成葉の裏面に短い伏毛が散生する。苞は長楕円形で,鈍頭ないし
円頭,下から約1/3の所でややくびれる ---------- オノエヤナギ
H.成葉の裏面には主脈にほぼ平行する白色の長い伏毛が密生し,
銀白色を呈する。 --------------- キヌヤナギ・エゾノキヌヤナギ
F.成葉は両面ともに無毛で,若葉の縁は巻かない。北海道産。¦
E.低木である。
F.山地や低地に生育する小低木または大低木。
G.苞は上半部は黒色または黒褐色で,下半部が淡黄緑色である。
裸材に隆起線がある。
H.高さ5mになる。前年生の枝は無毛。¦
H.高さ0.2-3mになる。前年生の枝にふつう残毛がある。
I.高さ20-70cmの低木。成葉は普通長楕円形で小さく,
長さ1.5-3cm。--------------------------------- ノヤナギ
I.高さ0.5-2mの低木。成葉は長楕円形,長さ5-20cm。
------------------- サイコクキツネヤナギ・オオキツネヤナギ
G.苞は淡黄緑色で,または時に上端部が褐色を帯びるものが
混生する。¦
F.高山に生育する匍匐性の小低木。¦
D.花糸は全長にわたり合着する。苞の上部は黒色である。
E.花糸は下部に毛がある。成葉は両面とも無毛である。
F.成葉はふつう対生,またはやや対生,あるいは互生する。
G.成葉は長楕円形で円頭ないし鋭頭。 ------------- イヌコリヤナギ
G.成葉は線形で鋭頭。 ----------------------------- コリヤナギ
F.成葉は常に互生する。枝端の若葉は先端部を除き縁は裏側に巻き,
両面に白色軟毛があるが,やがて無毛となる。 --------- カワヤナギ
E.花糸は無毛である。
F.低木で高さ3m。枝は叢生し,成葉は長楕円形で鋭頭。 --- ネコヤナギ
F.高木で高さ約14mに達する。¦
C.雄蕊は1個または2個で,同一花穂内でしばしば混在する。花糸は離生,
または種々の高さまで合着する ------------------------- ヤマヤナギ
■■ 雌株による検索 ■■
A.側芽の鱗片は反軸側で合着するが,向軸側では合着せず,縁が重なり合う。
---------------------------------------------------- マルバヤナギ
A.側芽の鱗片は向軸・反軸側とも合着し,深い帽状となる。
B.腺体は2個。腹腺体は卵形で,背腺体とふつう側方で合着する。花穂は
楕円形で長さ1.5cm。子房は無柄で白毛が密生し,長さ約2mm。花柱は
やや長く,子房の約半長。柱頭は長く,外曲する ------------- ジャヤナギ
B.腺体は1個,まれに2個。
C.高木である。 *1
D.枝は下垂する。 -------------------- シダレヤナギ・ウンリュウヤナギ
D.枝は斜上する。
E.苞は淡黄色~淡黄緑色で,両面の下半部または基部付近に毛があるが,
しばしば無毛となる。
F.子房は無柄またはほとんど無柄。柱頭は線形または倒卵形で
外曲する。
G.花柱はやや長く,子房の半長またはそれ以上ある。子房の全面に
白軟毛が密生する。 *2
H.柱頭は長さ0.4-0.6mmで花柱より短い --------- オオタチヤナギ
H.柱頭は花柱と同長で長さ約0.7mm -------------- ヨシノヤナギ
G.花柱はごく短いか欠く。
H.花穂は長さ約3cm。子房は全面に白軟毛が
密生する ------------------------------------ シロヤナギ
H.花穂は長さ1-2cm。子房は基部にわずかに毛があるか,
または全面無毛 ----------------------------- コゴメヤナギ
F.子房の柄は長く,約1.5mm長で腺体の約倍長。柱頭は短く,凹頭
または軽く2浅裂し外曲しない ---------------------- タチヤナギ
E.苞の上半部は黒色,褐色あるいは暗褐色を呈し,両面に長軟毛が密生。
F.子房の全面に白色の短毛が密生する。枝端の若葉は先端部を除き,
縁が裏側に巻く。
G.花柱はごく短い。子房の柄は長さ2-3mm。腺体は短く,卵形で切頭
---------------------------------------- ヤマネコヤナギ
G.花柱は長い。腺体は線形で切頭。子房の柄は腺体と同長
あるいは短く,有毛で,長さ約1mm。花柱は子房と同長
------------------------------------------ オノエヤナギ
F.子房は無毛で柄がある。¦
C.低木である。 *3
D.高山帯のみに生育する匍匐性の矮小低木。¦
D.高山帯以外に生育する小低木または大低木。
E.苞の上部は黒色または黒褐色で,両面有毛。
F.花穂は同一個体で対生またはやや対生,あるいは互生し,
葉より先に現れる。
G.花穂は長さ0.8-1.0cm。 ---------- ノヤナギ
G.花穂は長さ1.5-3.0cm。 ---------- イヌコリヤナギ・コリヤナギ
F.花穂は常に互生する。
G.子房は無毛で柄がある。苞の両面に鉄錆色の毛をしくか,あるいは
鉄錆色と白色の毛とが混生する。 ------- サイコクキツネヤナギ
G.子房は有毛。苞の両面に白色の長軟毛がある。
H.枝端の若葉は先端部を除き縁が裏側に巻く。 ------ カワヤナギ
H.枝端若葉は縁が巻かない。
I.花柱はよく発達し,長さ2.5-3.0mm。 ------------- ネコヤナギ
I.花柱は短く,長さ0.5-1.2mm。 ------------- オオキツネヤナギ
E.苞は淡黄緑色であるが,しばしば上部が帯褐色~黒色のものが
混生する。柱頭は短く,凹頭ないし2浅裂。 ----------- ヤマヤナギ
【註】
*1: タチヤナギの若木(株立ち)は大低木に見える。
*2: ヨシノヤナギがほぼ“半長”,“それ以上” はオオタチヤナギを意味する
のであろうが,ヨシノヤナギについては変化がありそうである。
保育社の原色図鑑でも,本文では半長弱であるが図版は全然違う。
『Flora of Japan』(H. Ohashi, 2006)では,1/3長以下になっている。
・ヨシノヤナギ ----- 子房:±3mm,花柱:0.5-0.8mm
・オオタチヤナギ ----- 子房 1.2-2mm,花柱 ±1mm
*3: 樹高3m以下。但し,カワヤナギとヤマヤナギは例外(小高木)。