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オオタチヤナギ Salix pierotii

気に掛る点が幾つかあって,まだ同定は完結していない。現時点でこのように “自分は判断する” ,という意味での同定である。以下,平凡社図鑑(木村有香 1989)の「雌株の検索表」に従う。

◎ B.腺体は1個,まれに2個。
 …… ごく稀に小さな背腺体を持つ小花が混じることがある。「腺体が2個」が普通ではないし,「しばしば互いに側方で合着」することもない。

◎ C.高木である。
 …… 巨大なのが普通に見られるので,低木や “大低木” ではない。

◎ D.枝は斜上する
 …… 枝は下垂しない。つまり,シダレヤナギ・ウンリュウヤナギではない。

◎ E.苞は淡黄色~淡黄緑色で,両面の下半部または基部付近に毛があるが,しばしば無毛となる。
 …… 数多くの個体をチェックしたが,苞の上部が色付くものは全くなかった。「両面に長軟毛が密生する」感じでもない。多少の変化はあるもののとても “密生” とは言えない。

◎ F.子房は無柄またはほとんど無柄。柱頭は線形または倒卵形で外曲する。
 …… 子房は無柄で,柄が長く(約1.5mmで腺体の約倍長)はない。

◎ G.花柱はやや長く,子房の半長またはそれ以上ある。子房の全面に白軟毛が密生する。
 …… ここはややスッキリしない部分である。花柱が “ある” のは明瞭で「やや長く」も感じるが,「子房の半長」には達しないことが多い。ただ,子房は成長して伸びるので,柱頭が黒変しない(黄色い)内に観察すること。

しかし,反対の選択肢「G.花柱は短い」を選ぶと,子房の全面に白軟毛が密生することからシロヤナギということになる。ただ「雌花穂の長さ約3cm,径4-5mm」というのは長細すぎる。最大でも実測値は「長さ:2cm,径:9mm」で丸っこい感じ。このサイズはオオタチヤナギの記載とピタリと一致する。それにシロヤナギの花柱は,ほとんど “ない” ように思われる。

 H.柱頭は長さ0.4-0.6mmで花柱より短い --------------- オオタチヤナギ
 H.柱頭は花柱と同長で長さ約0.7mm ------------------- ヨシノヤナギ
 …… ここはどちらか判断できない。 “柱頭の長さ” はどこを測るかはっきりしないし,計測値の差も微妙すぎる。雌花の形質だけを使うのでこうなったのであろう。葉の特徴を使ってヨシノヤナギを排除する。

ヨシノヤナギの成葉は,
(1) 長さ4-8cm,幅1-2cm。
 …… オオタチヤナギは,長さ9-12cm,幅1.2-3.0cm。明らかにこちらである。ヨシノヤナギは葉が小さいのが特徴だという。
(2) 裏面は淡緑色。
 …… 過去の記憶では,裏面が全て粉白を帯びていて “淡緑” とは言えない。山と谿谷社の「樹に咲く花」(吉山寛 2000)には,「葉裏が光沢のある緑色なのが特徴」となっている。

今後の予定。
(1) オオタチヤナギは,雄花があれば簡単・明瞭な同定ができるので是非とも雄木を見付けたい。今年になって,島後・海士・西ノ島の3島をかなり見て歩いたが雌木ばかり!ヤナギ類は何故か雌木の方が多いのだという。

(2) よく似ていてかつては混同されていたジャヤナギ S. eriocarpa を捜すこと。隠岐の記録はあるが,古いものは信用できない。

(3) オオタチヤナギ?の果実がちゃんと成熟するかも確かめておきたい。ジャヤナギの雌花は「成熟しないで落ちる」(長谷川義人 2003)そうである。日本には雄木がないためであろうか。

(4) ジャヤナギとの区別,花がないと分らないでは困るので,葉の比較もしておきたい。難しそうな気はするが全く同じということもないであろう。同時に,シロヤナギとヨシノヤナギの否定も。

(5) 今回の雌花の観察で気になって仕方がない事がある。腹腺体の先端がしばしば “凹頭(時に中裂)” になるのだが,その点に触れた文献を見ない。図版類にもそのようにはなってはいない。著しい特徴であると思うし(通常は鈍頭?),隠岐だけの地域変異とも思えないのだが…。

         [⇒ オオタチヤナギ その後]

ヤナギ類 同定事始め

  さん

雑然とした記事になりました。中間報告にもなっていません。隠岐以外の人には叱られそうですね。

ヤナギはサクラのように, “葉が展開する前に花の咲く” グループと, “葉の展開と開花がほとんど同時” のグループの2つに分かれます(マルバヤナギ1種のみ花が葉の展開後)。前者の早咲グループは今(3月下旬)が観察適期ですが,後者の方はまだ花穂が頭を出すか出さないかの状態で,4月上旬にならないと雄蕊・雌蕊とも成熟しません。つまりまだ十分な観察ができません。以下に書いたことは半分以上推測です。今年はヤナギをものにしてやろうと気が焦っていけません。

Ⅰ。自生種
過去の記録によると隠岐に自生するヤナギは以下の5種です。これ以外のものが見付かれば “新発見” というわけです。

 〔普通種〕
★ ネコヤナギ -------- 3/12に銚子川,3/19には八尾川を下流から上西神社までと,近石川を見て歩きました。川の中州に幾らでもあります。島前には何故ないんでしょう。水量豊富な大きな川がないためだと思いました。また,市街地付近ばかりで山の中にないのは,ヤナギが流れ近くの陽樹だからでしょう。山地はどうしても他の樹木に被われます。

川の中のものは,全て株立ちして下部が這うようなタイプです。役場近くの湿地(元水田?)だけに,高さ3m程度に立上がる大きいのが群生していました。ネコヤナギにはこの2型があるそうですが,単に環境条件による生態差かもしれません。

“猫の尻尾” が意外に小さく,銀白色とはいうものの黒ずんで地味(雌花はなお更),私のイメージとは違っていました。花屋さんでネコヤナギの名で売っているのはフリソデヤナギかもしれません。こちらの方がネコヤナギらしく感じます。

雄木と雌木の量の比が気になっていたのですが,当然ながら1:1で人間と同じでした。混生したり直ぐ近くにあったりします。これも当然,離れていては生殖に支障を来すでしょう。小さい虫は余り遠い距離を飛回らないそうです(虫媒花)。

★ オオタチヤナギ -------- ネコヤナギに混じって,まだ芽の伸び出していないヤナギがポツンポツンと立っています。皆若木ですが分布範囲は広い。この1本が本種♀でした。♂♀はどうあれこの川筋のものは皆同種だと思います。今日海士の溜池で採ったものも同一物でした。隠岐のヤナギはほとんどこれなんではないか(ネコヤナギ以外),という厭な予感が当りそうです。

 〔やや稀〕
★ ジャヤナギ -------- 日本には雌木しかなく, “大陸より渡来” と考えられています。しかし何のために日本中に植えたんでしょう。あるいは帰化でしょうか。♂がないので種子はできないんですが。枝がポロポロ簡単に折れて広がるようです。

昔,西ノ島(耳々浦)で見ています。最近少なくなっている種だそうですが,耳々浦にはまだ残っています。来週,真っ先にこれを確認に行って来ます。オオタチヤナギとの区別はどうするんだと悩んだのですが,花があればはっきり区別できることに気付きました。そして,ヤナギは余程の若木か徒長枝ででもない限り必ず(?)花を着けます。

なお,昔ジャヤナギと同定できたのは,ジャヤナギとオオタチヤナギとが区別されていなかったからです(同一種の扱い)。

 〔ごく稀〕
★ カワヤナギ -------- 丸山・岡部両氏の目録にもありますが,古くてそれ以後の環境の改変がひど過ぎます。杉村先生の標本は「日ノ津(1983.5.26),古海(1992.8.?)」ですが,両所とも行って見る気にもなりません。ヤナギの生えるような環境がなくなっています。三面張りで舗装道路。どこかに昔ながらの小川が残っていないでしょうか?いわゆる隠岐方言のカーラ(川原)ですが,今や貴重な文化財(天然記念物)になりました。

★ タチヤナギ -------- 杉村先生の “標本目録” に,「東郷(1986.5.9)」があるのみです。行っては見ますが30年前の樹はもう残ってないでしょう。ヤナギは急速に数を減らしています。河川改修・道路整備・圃場整備・宅地造成・湿地埋立・…。生育環境が低湿地の陽地で,人間の生活圏と一緒なのが不運でした。

Ⅱ。栽培種
イヌコリヤナギ -------- 八尾川河川敷(雨来)に,♂:2,♀:1ヶ所の群生があります。本種は自生があっても不思議ではないのですが,以下の理由から植栽されたものと考えます。雄木は花材で,海士にも植えた人がいますが,雌木も植えるんでしょうね。苗は売ってるのかな?
 (1) 近くに人家があって,階段で中州に下りられる。
 (2) 付近の田圃の畦にもウンリュウヤナギと並んで植っていた。
 (3) 雌木の上部を剪定鋏で切りとった跡があった。
 (4) 一目で分るほど目立つ種なのに,過去の記録が一切ない。
 (5) 1地点でしか見ていない(今のところ)。

コリヤナギ(韓国原産) -------- 柳行李の材料です。昔の記録はありますし,私も見たことがありますが,もう残ってないでしょう。
シダレヤナギ(中国原産) -------- お馴染みの最も柳らしい柳です。
ウンリュウヤナギ(中国原産) -------- 庭木や花材。枝が(葉も)細くよじれて垂れる。
フリソデヤナギ(雑種 ネコヤナギ×バッコヤナギ) -------- 雄花の花穂は太く長く,銀白色で見事。枝や冬芽が真っ赤なのも特徴。苗木店で売っている。

Ⅲ。未同定種
3年前から私がオノエヤナギだと言っていたものです。花と葉が “同時性” なのでオノエヤナギ(花が先)でないことは確実です。これだから素人の言うことは信用できません。同定時期が遅かったので花期を誤ったのでしょう。雄蕊・雌蕊も老化して毛が落ちていたようです。

“雄木” なのでジャヤナギではあり得ません。 “苞に長白毛がない” のでオオタチヤナギでもありません。じゃあ何か?雄花が成熟する一週間後が楽しみです。

もう一つ変なものがあります。これは西日本初のシロヤナギでは?と興奮していたものです。昨年暮れに2本だけ発見。異常に細く小さい葉を茂らせていたのですが,先日行ってみたら枯死が必至の状態でした。もう時間の問題です。大枝は全て枯れ(バキンと折れる),僅かに幹から弱々しい徒長枝が芽吹いているだけです。花はもちろん,まともに育った葉が見られるかどうか?絶滅を座して待つのは気が咎めるので,挿木をしてみる積りです。

Ⅳ。不明種
これは,杉村先生が「Salix sp. (中里~福井)1983.5.27」としているものです。この時季なら花を見ている可能性が大ですが…?ただ当時はまだ平凡社の図鑑が刊行されておらず,同定が非常に難しかった時代です(花♂・♀と成葉,3者のセットが必要)。これは今年徹底的に当ってみる積りです。と言っても数本しか残っていないので簡単です。まさか雑種ではないと思いますが…。雑種はできるけど “稀” と言われています。


 【追記 2013.3.30】
ネコヤナギの雄木と雌木の量の比(性比)について,「当然ながら1:1」と書きましたがこれは問題があります。

「ヤナギ属の多くは雌に偏った性比を持つ」ことが多くの研究により報告されているそうです。そして,何故そうなるのかはまだ明らかになっていないらしい。更に,一般に「雌雄異株の高木類では,雄の方が個体数が多い」とも言われているようです。

ネコヤナギの雄が普通に見られたのは,ヤナギ類では例外なのかもしれません。今調べているオオタチヤナギ(?)では,雌木ばかり出て来て不思議に思っています。

 【追記 2013.4.8】
「シロヤナギでは?」と書いたもの,これはオオタチヤナギの雌株でした。信じられません。葉は細長くて小形,オオタチヤナギの半分くらいでしたが…。「枯死が必至」も勘違いでした。枯れているのは下方の大枝だけで,幹自体と上部の枝は生きています。下の枝が枯れたのは水没の影響かもしれません。

 【追記 2013.5.13】
「シロヤナギでは?」と書いたもの,やはりシロヤナギの可能性が大です。まだ,ヨシノヤナギ S. yoshinoi を否定し切れていませんが,少なくともオオタチヤナギでないことは確実です。

オオバヤドリギ Taxillus yadoriki

風変りな植物であるが,本種のことを余り考えたことがない。隠岐に自生があり, “恐らく北限” という認識はあったが,完全な野生状態のものは絶滅したと思っていた。古くから西ノ島町別府の民家に残っているが(2軒),宿主は庭木であり人の管理によって存続しているものと思われる。

『隠岐雑俎(岡部武夫 昭25)』に「中村や銚子の奥部に多い」と書いてあるが,私自身は見たこともないし,噂を聞いたこともない。隠岐のオオバヤドリギはすっかり終ったと思い込んでしまった。なお今回,『島根の種子植物相(杉村喜則 2005)』に,産地として「布施」が挙っているのに気付いた(何時,何処でかは不明)。

昨日(2013.3.6), 中村の“高尾暖地性濶葉樹林” を歩いていて(どん詰りの最上部,300m alt.),落ちている奇妙な枝が目に入った。1本だけだがまだ生きた状態で。ほとんど人の入込まない自然林内である。やはり人家の庭とは,出会いの衝撃が違った。

場所が場所だけに,かろうじて生残っている最後の一株だとは考えにくい。丁寧に捜せば更に見付かる可能性がある。もちろん,種子は “鳥散布” 。雪折れで落ちて来たに違いないが,宿主の確認はできなかった。樹高が高すぎてどれだかよく見えない。樹種(落葉樹)も同定できなかった。

余計なことであるが,葉縁に米粒ほどの “虫こぶ” が並んでいる葉が何枚もあった。葉の縁だけに1列に出る虫こぶは初めて見た。中を開けてみたら,孵ったばかりの赤ちゃん虫が緩慢に動いていた。虫の名前は分らないが,寄生者にまた寄生しているわけだ。インターネットを捜したら,この虫こぶに触れているサイトが一例だけあった。余り一般的ではないんだろうか。

取りあえず,隠岐が北限自生地かどうかを確かめておきたい。図鑑では「本州(関東南部以南)」などとなっている。確かに,東北6県の記録はない。
  ※ ●:レッドリスト,△:少ない,○:記録あり,×:なし,?:不詳

栃木 ×,茨城 ×,千葉 ●,東京 ?,埼玉 ×,神奈川 △
山梨 ×,長野 ×,岐阜 ?,静岡 △,愛知 ×,三重 ●
石川 ×,福井 ●
兵庫 ×,京都 ●,滋賀 ×,大阪 ×,奈良 ●,和歌山 ●
鳥取 ×,島根 △,岡山 ×,広島 △,山口 ●
香川 ×,愛媛 ●,徳島 ●,高知 ●
福岡 ○,佐賀 △,長崎 △,大分 ●,熊本 ●,宮崎 ○,鹿児島 ●,沖縄 ○

自生のある多くの府県でレッドリストに選定,その他の県でも分布域が限られていたり個体数が少なかったり,全国的に稀なものであることが分る。そう言えば,本種が載っていない図鑑類も結構多い。

千葉県は房総半島南部,福井県は若狭湾沿海地,隠岐が確実な北限であることが分る。北限に近い千葉・福井でレッドリストに含まれているのは納得ができる。

島根県は益田市~松江市に数ヶ所の記録はあるが,絶滅の心配はないんだろうか。少なくとも隠岐では急速に個体数が減ったことになる。減った原因はよく分らないが,気候変化ではないであろう。人里付近の開発によって大きな樹木が伐られたり(邪魔なので),低山地の人工林(針葉樹)が増えて自然林がほとんどなくなった。そのことが関係しているような気がする。普通のヤドリギ Viscum album ssp. coloratum も急速に減って,今や隠岐では絶滅寸前の状態だ。山は削れ・湿地は埋めろ・樹は切倒せ,という文化はいつまで続くのか。

 【追記】
その後,島後(卯敷)の野津大さんから以下の情報をいただいた。一生のうち4回というのは決して多い数ではないが,ある程度分布が広いことを知って少し安心できた。ただ,個体数が一定数を割ると危険なので,今後どうなるかが気懸り。

 (1) 卯敷集落から約1キロメートル山地に入った所のスギに寄生していた。かなり大きな株であったが,周囲の樹木が茂りすぎて枯死した。
 (2) 布施の “蓬莱園” 近くのケヤキの木に小さな株が見られたが,今は見つからない。
 (3) 西郷中学校の門から出て少し歩いた所,中華専門店の庭木に寄生していたが,最近確かめてはいない。
 (4) 卯敷から約1.5キロ山地入った所にメタセコイヤがあり,たぶんオオバヤドリギだと思う植物が寄生していた。樹高が高すぎて確かめていない。

 【追記2】
島後布施地区の北谷で,ホウノキの梢に2株着いているのを確認(13.11.2)。近くのウラジロガシの巨木(直径1m)には,ナゴランも数株。やはり人の入込まない場所には自然状態が残っている。

隠岐で一番寒い場所である北谷。そこに北限産地の2種が残っているのが意外だった。しかも,すくすくと元気一杯。両種とも昔に比べ全体に数が減っているとは思うが,気温はそんなに関係ないことが分る。ここは,斧の入っていない峡谷で,風も吹込まず空中湿度の高い場所。

 【追記3】
『神奈川県植物誌2001』に葉の図版があり虫こぶ(Gall)も描いてあった。以下引用。薄葉重氏は虫こぶの研究家。

「なお,小田原市では,葉の縁の裏側に長さ3mmほどの楕円形のゴールが並んでいるのがみつかっているが,薄葉重氏によれば,このゴールは未記載のものであり寄生者の解明が待たれる。」

ヒゲスゲ Carex oahuensis var. robusta

前回のセンダイスゲの分布では「離島の名前が沢山出て来て驚いた。」が,こちらは更に多い。しかもほとんどが小さな無人島である。隠岐でも事情は同じで,人の住んでいる大きな島ではほとんど見たことがない。群生するのは小さな離れ島である。そしてそこは,オオミズナギドリの営巣地であることが多い。

南方系の海岸植物で,そんなに多くはないものという認識はあった。隠岐には結構多いのでそれほど注目していなかったが,今回調べてみたら予想以上に少なかった。分布の中心は九州北部のように見える。そこから “細々と” ,太平洋側は千葉県房総半島まで続く。日本海側は,山口県と島根県石見辺りから隠岐に跳び,更に大きく跳んで能登半島の先端部に達する。最北は石川県の舳倉島(へぐらじま)であるが,ここもオオミズナギドリの繁殖地として有名な場所。

---------------------------------
  ※ ●:レッドリスト,◎:少ない,○:記録あり,×:なし,?:不詳

 千葉 ●,東京 ○,神奈川 ◎,
 静岡 ○,愛知 ●,
 石川 ●,福井 ×,
 京都 ×,兵庫 ●,大阪 ×,和歌山 ×,三重 ●,
 鳥取 ×,島根 ◎,岡山 ●,広島 ×,山口 ◎,
 香川 ◎,徳島 ●,愛媛 ○,高知 ●,
 福岡 ○,佐賀 ○,長崎 ○,大分 ◎,熊本 ●,宮崎 ◎,鹿児島 ●,沖縄 ○,

---------------------------------
  ※ 「」内は引用。 “…” 以下は地方植物誌等の情報。

千葉: …房総半島南部。
東京: …伊豆諸島・小笠原の記録。
神奈川: …三浦半島付近のみ。

静岡: …伊豆半島沿岸部。
愛知: 「渥美半島の小さな岩場に1ヶ所だけ」
石川: 「北限。舳倉島・七ツ島,他に1ヶ所」

兵庫: 「瀬戸内側 1ヶ所のみ」
三重: 「志摩半島 生育地点数は10以下」

島根: …益田市の高島にはある。他に記録を確認できたのは隠岐諸島のみ。
岡山: 「笠岡市の島嶼部1ヶ所のみ」

徳島: 「県内の個体数は少なくないが、生育地は極めて限られている」
愛媛: …佐多岬半島以南の海岸部。
高知: …愛媛県に接する宿毛市に2ヶ所の産地。

大分: …『大分県植物誌』の全産地11,その内10が離島。
熊本: … 標本産地8の内6が離島。
鹿児島: …甑島・種子島・屋久島・喜界島・徳之島・...

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現在分っている隠岐の状況をメモしておくことにする。全て無人島。
・大波加島(おおはかじま,知夫村)
  :ここはオオミズナギドリもすごいがヒゲスゲもすごい。広大な純群落は異様で,「ここは日本か!?」と思ったものだ。
・大森島(おおもり,都万村)
  :陽の照りつける岩山にぼこぼこと大株が点在,強者の風格が漂う。最も標準的なヒゲスゲ景観と思う。やはりオオミズナギドリがいる。すぐ近くの松島(海士町)に全くないのは奇妙。“松島の酋長”と呼ばれたこともあって,私のよく知っている島なのだが…。岩の露出した自然草原(極相状態)もあるというのに。
・星神島(ほしのかみ,西ノ島町)
  :深谷治氏採集の標本で確認。ここもオオミズナギドリが棲んでいる。どうも,簡単には行けず上陸も難しい島ばかりだ。
・小森島(おもり,海士町),二股島(ふたまた,海士町)
  :深谷治氏からの私信による。上陸の経験はないのだが間違いはない。他に紛らわしい種はないので。
・浅島(あさじま,知夫村)
  :杉村喜則氏の標本。

有人島(?)では,塩浜(西郷町)・古海(知夫村)・那久(都万村)の標本がある。多分滅多にしか人の行かない場所の,海蝕崖の一部であろう。私は,豊田(海士町)と木佐根(知夫村)で1ヶ所ずつ小さな群集を見ているだけ。広がりは全然なかった。

もちろん今まで “有人島” の方をはるかに詳しく広く見ているのだが,無人島とは勢い・量ともまるで違う。何故そうなるのか不思議である。取りあえず,思いついたキーワードを挙げておく。人の住むような島は土が深く樹林が発達し,人為の攪乱があると藪ができやすい。競合種の進出できない厳し過ぎる環境を求めているのかもしれない。
 ・土壌の少ない岩や崖
 ・海からの強風と塩分
 ・樹林や藪を嫌う
 ・強光や乾燥は平気

なお前回,センダイスゲを “海岸植物” と考えたが,ヒゲスゲのような純粋の海岸植物とは言えない。 “海近く” の林内や林縁と,むき出しの “海岸” とは環境が違う。

 〔付記〕
学名は色々あって困る。一番普通そうなものを使った。oahuensis はハワイのオアフ島である。var. robusta Franch. & Sav. の基準産地は三浦半島の横須賀付近だという。

センダイスゲ Carex sendaica

センダイスゲは『島根県の種子植物相』(杉村喜則,2005)で初めて知った。隠岐のスゲはかなり調べられているが,本種の過去の記録は一切ない。しかも,隠岐西ノ島が県下唯一の産地ということで俄然注目。

場所は国賀海岸で(海から数百メートル),杉村先生が来島された時一緒に捜したが見付からなかった。もう少し広く調べてみようと思うが,放牧が激しくなって牛が踏んづけるので見通しは暗い。牧草や帰化雑草も増えてきた。

ところがその後,数キロ離れた高崎山の尾根筋で発見した(2007.5.5)。照葉樹の疎林内で(標高300m),ここ40年間植生が変化してない場所である。ただ,少し林内が暗くなっているので,先日多少の間伐をして光が射し込むようにした。実はここには隠岐新産のベニイトスゲ Carex alterniflora var. sikokiana もある(ほとんど混生)。両種とも今年はきっと元気が出ることであろう。

“間伐記念” に分布を細かく調べてみた。以下は感想である。
 (1) 分布域が結構広い割には,産地・個体数が異常に少ない。県全域で1~3ヶ所という地域がほとんどである。比較的普通か?と思ったのは,タイプ産地の宮城県と茨城・福井の3県だけだった。

 (2) 産地が沿海地に偏る。もっともこれは「海岸に近い平地から低山地の疎林内」という図鑑の記述通りである。『日本の浜辺を歩く〈海岸植物の生態〉』(村上司郎,2011)を見たら,海岸性のスゲが20種挙っていて本種も含まれていた。

 (3) 離島の名前が沢山出て来て驚いた。普通はそんなことはない。例えば,
  対馬・壱岐・見島・淡路島・宮島・小豆島・伊豆諸島・飛島
その他聞いた事もないような小さな離れ島まで。

なお,国外分布は「韓国・中国」で,本種も “大陸系の遺存種” ということになるかもしれない。

---------------------------------
  ※ ,×:なし,●:レッドリスト,△:少ない,○:記録あり?:不詳

 北海道 ×,
 青森 ×,秋田 ×,山形 ●,岩手 ●,宮城 ○,福島 △,
 茨城 ○,栃木 △,群馬 ×,千葉 ●,埼玉 ×,東京 ●,神奈川 ●,
 山梨 ×,長野 ●,岐阜 ●,静岡 ×,愛知 ●,
 新潟 ×,富山 ×,石川 ●,福井 ○,
 滋賀 ●,京都 ×,兵庫 ●,大阪 ×,奈良 ●,和歌山 ●,三重 ●,
 鳥取 ×,島根 △,岡山 ●,広島 △,山口 ●,
 香川 △,徳島 ●,愛媛 ●,高知 ●,
 福岡 ?,佐賀 △,長崎 △,大分 ●,熊本 ×,宮崎 ×,鹿児島 ×,沖縄 ×,


---------------------------------
  ※ 半角数字は標本産地数。「」内は引用。 “…” 以下は地方植物誌等の情報。

山形:〔ⅠA類〕 … 1 飛島
岩手:〔Ⅱ類〕 …南部
宮城: … 16
福島: … 6 「まれ」

茨城: … 9 「ややまれ」
栃木: … 6 「やや稀」
千葉:〔準〕 … 4 「1990年に確認」
東京:〔Ⅱ類〕 伊豆諸島のみ
神奈川:〔ⅠA類〕 三浦半島のみ

長野:〔ⅠA類〕 …『長野県植物誌(1997)』に記載がない!
岐阜:〔Ⅰ類〕 2013年版改訂案で追加。 …古い記録はある。
愛知:〔Ⅱ類〕 5 内2ヶ所は離島

石川:〔Ⅱ類〕 5 「産地は局所的で確認情報も少ない」
福井: …  4 沿海地。

滋賀:〔情報不足〕 「志賀町に記録があるが,確認されていない」
兵庫:〔Ⅱ類〕 4 淡路島と対岸の明石市
奈良:〔Ⅱ類〕
和歌山:〔ⅠA類〕 …紀伊大島の記録あり。
三重:〔ⅠB類〕 1 「既知の生育地点数は1のみ」

島根: … 1 「隠岐諸島西ノ島(国賀)」 2007年に高崎山でも確認。
岡山:〔準〕 2 「個体数は少ない」
広島: … 1 宮島
山口:〔Ⅱ類〕 …『山口県植物誌』によると,産地は美祢市と見島。

香川: … 2 1つは小豆島。
徳島:〔Ⅱ類〕 「鳴門市で生育を確認した。徳島市・牟岐町に記録がある」
愛媛:〔情報不足〕 「文献上記録があるが産地が不明」
高知:〔ⅠB類〕 …「数ヶ所で記録があるが,標本は葉山村の石灰岩地のみ」

福岡: …大分県RDBに「九州(福岡・佐賀・大分)」とあるのみ。
佐賀: … 5 「やや稀」
長崎: …対馬の確実な記録がある。『長崎県植物誌(1980)』には記載なし。
大分:〔Ⅱ類〕 「豊後水道域。ごく最近,生育が確認された」

               [⇒ センダイスゲ その後]
プロフィール

T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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