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 コスミレ Viola japonica の変化

ちょっと変ったコスミレに出会ったので記録しておくことにする。今後,私と同じように戸惑う人がいるかもしれないので。

コスミレは昔からよく知っていて,一目で分る自信があった。固定的なイメージができていて(隠岐での経験に限るが),それで同定に迷ったことはない。ところが今回現地で浮んだ名前は,ノジスミレ V. yedoensis ・ヒメスミレ V. inconspicua ssp. nagasakiensis の2つだけ。自分にとっては全く初めての変化型ということになる。

(1) 葉の表面に立毛が密生~全草毛だらけ。
  …… 今まで本種が毛深いという印象はなかった。通常の図鑑でも,「まばらに毛があるかまたはほとんど無毛」とか,「ふつうは無毛だが,ときに葉の表面に毛のあるものもある」となっている。

(2) 葉の裏は濃い紫色で,表面はくすんだ暗い緑。
  …… 淡い黄緑色。黒っぽいという記憶はない。裏面が濃い紫でもなかった。

(3) 長めの三角形を思わせる卵形。
  …… 柔らかな草質で,幅が広めのふっくらとした長卵形だった。ほとんどこの一点でコスミレと判断していたのだが。

家に帰って,ノジスミレやヒメスミレでないことはすぐに分ったが,アカネスミレ V. phalacrocarpa (隠岐の記録なし)を否定するのに時間がかかった。唇弁の距に毛があったからである。花弁の外側に毛が生えるとは!距に毛があるのはアカネスミレとゲンジスミレだけの特徴とされている。

結局「アカネスミレの側弁の基部は “必ず” 有毛」という特徴を突止めた。持帰った標本の側弁がたまたま無毛でよかったのだが,ここが有毛だったら(西日本に多いという)どうしよう。萼や子房の毛の有無を調べるんだろうか。

『増補改訂 日本のスミレ(いがりまさし 2005)』
  「花の色や形態に変化が多く,観察者を困らせるスミレのひとつでもある。」
『日本のスミレ(橋本保 1971)』
  「本州では全体無毛,淡紫花の型が多いのですが,九州では,あちこちに毛が生え,花色の変化に富み,分類に困難を感じることが少なくありません。」

色々探し回ったが,「コスミレの距に毛が出ることがある」との言及があるのは,『野に咲く花(山と谿谷社 1989)』と,いがりまさし氏のWebサイトのみであった。総合的な判断で答の見当はついていたのだが,初心者はいつまでも不安なものである。

プロフィール

T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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