アカバグミ Elaeagnus × maritima (雑種)
ツルグミ E. glabra とオオバグミ E. macrophylla の自然雑種(推定)。雑種は一般に,検索表はおろかその記載さえ図鑑類には載っていない。単に名前を羅列し「A × B」で済ますのが普通。従って,「“雑種の理解” = “親の精密な把握”」しか方法がない。
雑種ができると認識されているのに,名前の付いていないものも多い。更には,雑種があると思われるのに,何も言及しない場合もしばしば。雑種をそれと知らず「一体どちらの種だろう」と何年も悩み続けることになる。
Ⅰ。両親種の特徴
(1) 葉の形 ………(若枝や徒長枝は避け全体を見渡して)
オオバグミ : 広卵形で,円い。基部は切形に近い円形。
ハート形で葉先は円鈍または短く突出。
ツルグミ : 楕円状で,長い。基部は楔形~円形。
上部は徐々に狭まり先端ははっきり尖る。
(2) 葉裏の色 ………(ちゃんと生長した標準的な葉で)
オオバグミ : 銀白色に光って見える。微かに色付くことはあるが,白さが目立つ。
ツルグミ : 明らかに赤褐色を帯びる。特に中肋の色が濃い。金属光沢を感じる。
(3) 小枝の色と稜角 ………(複数の枝でチェック)
オオバグミ : 灰白色を帯び明るい。太くて,明瞭な稜角があり平べったい
ツルグミ : 濃い赤褐色に染まる。細くて,稜角ははっきりせず円い。
(4) 萼筒部の形態 ………(熟期を揃えて比較)
オオバグミ : 子房の上が急に膨らみ釣鐘形。太い。
ツルグミ : 下部に向け尖るラッパ状。細長い。
Ⅱ。同定
(1) 葉は全て円に近い広卵形。こんな丸い葉のツルグミはない。
(2) 葉の裏面は淡く褐色を帯びる。オオバグミの成葉は銀白色で色付かない。
(3) 小枝ははっきり赤褐色で,稜角は僅かに感じられる程度。
(4) 萼筒はほぼツルグミと同じだがやや太め。しかし鐘状にはふくれない。
発見は宮本秀永氏で「変なツルグミがある」と話された。確かに,全体の印象はツルグミで,明らかにオオバグミとは違う。しかし,ツルグミとすると葉があまりにも円い。裏の色づき方も薄すぎる。
他に気付いた点は,・葉が小型(オオバグミの2/3),・葉質が厚くて硬い,・光沢がはなはだ強い,などであったが,これはこの個体の生態変異であろう。場所は海岸の崖の頭で,強光が照りつけ風も強く,乾燥も激しそうな環境だった
以上は1株だけの観察であるが,実際には「オオバグミ寄りからツルグミ寄りまで」変化があるという。ウェブ上の標本写真には,葉がやや長めでツルグミの葉を広くしたような型もある。しかし,裏面の色づきは明らかに薄くて白っぽい。「どちらかに限りなく近くて区別不能」のケースはないかもしれない。言わば,比較的判り易い雑種。
今回も現地で直ぐに「あっ,アカバグミ!」と思った。隠岐にアカバグミがあることを聞いていたので。それに,オオバグミとツルグミは子供の頃からよく知っている。遠くからでも,葉の色や蔓の伸び方・絡み方で見当がつく。子供達はグミの実を競って食べに行ったものだ(時には大人も)。現在は野鳥だけが食べている。
Ⅲ。分布
隠岐では遙か昔に,木村康信先生が焼火山で確認している(1株)。島根県下では,島根半島(丸山巌)と平田市・西郷町(杉村喜則)の記録が残っている。
各地の記録を調べてみたが全国的にも非常に稀で,やや広く分布していると思われたのは,千葉・神奈川・静岡・福井・山口の各県。幾らあってもよさそうな四国・九州でも少ない。隠岐が“北限”になると思っていたが,『福島県植物誌(1987)』を見てがっかり,福島県(恐らく1株)が北限と書いてあった。
少ないのは雑種ができにくいためであろう。もちろん場所が,オオバグミのある海辺近くに限られるという条件もある。ところがツルグミは本来内陸のもので,あまり海辺には現れない。両者が接して生えていないと昆虫が花粉を運べない。更に,雑種ができても一代限りで,子孫を残せないことが多い。仮に雑種の果実ができたとしてもそれが育つとは限らない。
雑種ができると認識されているのに,名前の付いていないものも多い。更には,雑種があると思われるのに,何も言及しない場合もしばしば。雑種をそれと知らず「一体どちらの種だろう」と何年も悩み続けることになる。
Ⅰ。両親種の特徴
(1) 葉の形 ………(若枝や徒長枝は避け全体を見渡して)
オオバグミ : 広卵形で,円い。基部は切形に近い円形。
ハート形で葉先は円鈍または短く突出。
ツルグミ : 楕円状で,長い。基部は楔形~円形。
上部は徐々に狭まり先端ははっきり尖る。
(2) 葉裏の色 ………(ちゃんと生長した標準的な葉で)
オオバグミ : 銀白色に光って見える。微かに色付くことはあるが,白さが目立つ。
ツルグミ : 明らかに赤褐色を帯びる。特に中肋の色が濃い。金属光沢を感じる。
(3) 小枝の色と稜角 ………(複数の枝でチェック)
オオバグミ : 灰白色を帯び明るい。太くて,明瞭な稜角があり平べったい
ツルグミ : 濃い赤褐色に染まる。細くて,稜角ははっきりせず円い。
(4) 萼筒部の形態 ………(熟期を揃えて比較)
オオバグミ : 子房の上が急に膨らみ釣鐘形。太い。
ツルグミ : 下部に向け尖るラッパ状。細長い。
Ⅱ。同定
(1) 葉は全て円に近い広卵形。こんな丸い葉のツルグミはない。
(2) 葉の裏面は淡く褐色を帯びる。オオバグミの成葉は銀白色で色付かない。
(3) 小枝ははっきり赤褐色で,稜角は僅かに感じられる程度。
(4) 萼筒はほぼツルグミと同じだがやや太め。しかし鐘状にはふくれない。
発見は宮本秀永氏で「変なツルグミがある」と話された。確かに,全体の印象はツルグミで,明らかにオオバグミとは違う。しかし,ツルグミとすると葉があまりにも円い。裏の色づき方も薄すぎる。
他に気付いた点は,・葉が小型(オオバグミの2/3),・葉質が厚くて硬い,・光沢がはなはだ強い,などであったが,これはこの個体の生態変異であろう。場所は海岸の崖の頭で,強光が照りつけ風も強く,乾燥も激しそうな環境だった
以上は1株だけの観察であるが,実際には「オオバグミ寄りからツルグミ寄りまで」変化があるという。ウェブ上の標本写真には,葉がやや長めでツルグミの葉を広くしたような型もある。しかし,裏面の色づきは明らかに薄くて白っぽい。「どちらかに限りなく近くて区別不能」のケースはないかもしれない。言わば,比較的判り易い雑種。
今回も現地で直ぐに「あっ,アカバグミ!」と思った。隠岐にアカバグミがあることを聞いていたので。それに,オオバグミとツルグミは子供の頃からよく知っている。遠くからでも,葉の色や蔓の伸び方・絡み方で見当がつく。子供達はグミの実を競って食べに行ったものだ(時には大人も)。現在は野鳥だけが食べている。
Ⅲ。分布
隠岐では遙か昔に,木村康信先生が焼火山で確認している(1株)。島根県下では,島根半島(丸山巌)と平田市・西郷町(杉村喜則)の記録が残っている。
各地の記録を調べてみたが全国的にも非常に稀で,やや広く分布していると思われたのは,千葉・神奈川・静岡・福井・山口の各県。幾らあってもよさそうな四国・九州でも少ない。隠岐が“北限”になると思っていたが,『福島県植物誌(1987)』を見てがっかり,福島県(恐らく1株)が北限と書いてあった。
少ないのは雑種ができにくいためであろう。もちろん場所が,オオバグミのある海辺近くに限られるという条件もある。ところがツルグミは本来内陸のもので,あまり海辺には現れない。両者が接して生えていないと昆虫が花粉を運べない。更に,雑種ができても一代限りで,子孫を残せないことが多い。仮に雑種の果実ができたとしてもそれが育つとは限らない。