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ハマアカザ Atriplex subcordata Kitag.

 Kさん

ハマアカザをご存じでしょうか?何故今頃と思われるかもしれません。一つの理由は,丸山先生の『隠岐島・島根半島・三瓶山』にある,37種の「隠岐島植物中珍奇著名なもの」に含まれているからです。どういう意味で重視されるのか,はっきり知りたいと思いました。

ツバメウツギ(Deutzia hebecarpa Nak.)・ミツバイワガサ・オオバアザミ(Cirsium Yoshinoi Nak. var. amplifolium Kitam.)・オキタンポポ・コバノネマガリダケ(Sasa romosissima Koidz.)・オキノアブラギク・ハシドイ・セリモドキ・カラスシキミ・オニヒョウタンボク・ハマナシ・ハマアカザ・クロベ・オオエゾデンダ・シロウマアサツキ・シシンラン・クモラン・カスミザクラ・ナゴラン・ベニシュスラン・ヒモラン・ヤナギイボタ・ダルマギク・ハイノキ・オオバヤドリギ・ハイネズ・ウンゼンマンネングサ・トウテイラン・チョウジガマズミ・オキシャクナゲ・ヨコグラノキ・マルバウマノスズクサ・ハナゼキショウ・ハイハマボッス・キャラボク・テツホシダ・クロキヅタ

“図鑑” からハマアカザの分布記載を,4例取り上げてみました。図のないものもありますので,図鑑ではなく “植物誌” というべきでしょうか(笑)。
 (1) 「北海道・本州・朝鮮・ウスリー・樺太・千島」
             : 日本の野生植物(北川政夫,1982)
    確かに “本州” は間違ってはいませんが…。山口県にも自生があるので。

 (2) 「樺太・千島・北海道・本州(広島県以東)」
             : Flora of Japan(S.E. Clemants, 2006)
    『広島県植物誌(1997)』によると,広島県から報告されたものはホソバハマアカザの誤認だったそうです。

 (3) 「日本の中部より北の海岸に自生」
             : 新牧野日本植物図鑑(2008)
    牧野さんの原文のままです。近畿以西では稀なのでイメージとしては悪くありません。
    エゾハマアカザという別名もあるくらいです。

 (4) 「本州(日本海沿岸は中国地方以東,太平洋沿岸は三重県以東)・北海道・樺太・千島」
             : 原色日本植物図鑑(北村四郎,1961)
    流石!京大は地元ですので安心できます。

北のものなので「どうせ中部以北では普通なんだろう」と思いました。ところが予想が外れて,詳しく調べてみる気になりました。

 【中国地方】
〔山口〕
 ごく稀。『山口県植物誌』には光市室積の標本が1点引用され,“本県が西南限” となっています。瀬戸内側なのが意外でした。
〔島根〕
  「沿岸に稀に分布 五箇,平田」。これは杉村先生の “植物相” からですが,産地が挙げてある時は “そこでしか見ていない”を意味するようです。島根半島には確かにあります(美保関・恵曇など)。
〔鳥取〕
  県立博物館に5地点の標本が収蔵されている。
〔広島・岡山〕
  自生なし。

 【近畿地方】
〔兵庫〕  ●準絶滅危惧種 もちろん日本海側の沿岸部です。
〔京都〕  ●絶滅危惧Ⅱ類 「多くない。…北部地域(丹後地域の海岸)。」
〔大阪・和歌山〕  自生なし。
〔三重〕  ●絶滅危惧Ⅰ類 「既知の生育地点数は5以下であり,個体数は少なく,…」

 【中部以北】
浜辺専門しかも波が洗うような場所なので,海のない県は関係ありません。北陸と東北は全県に自生していますので,量の “少ない” 県のみ取り上げます。
〔富山〕  ●絶滅危惧Ⅰ類
〔秋田〕  ●準絶滅危惧種

太平洋側はより稀の感じです。
〔愛知〕  ●絶滅危惧Ⅱ類 「生育地も個体数も少なく、また減少傾向も著しい。」
〔静岡〕  ●情報不足 「現状不明」
〔神奈川〕  ●絶滅
〔東京〕  情報なし。何をしているんだろう。
〔千葉〕  1959年の “記録” が1例あるのみ。
〔茨城〕  自生なし。
〔福島〕  ●準絶滅危惧
〔宮城〕  ●絶滅危惧Ⅱ類

これも基本的には “中部以北型” ,しかも〔北海道〕を除けばあまり個体数の多いものではないな,という印象です。何故か隠岐でも個体数はそう多くはありません。ただ分布は広くて,丁寧に捜せば大抵の海岸で2~3株は見付かりそうな気がします。およそ人の行かないような浜でも見ていますので,絶滅の心配はないかもしれません。

少し時化ると波をかぶるような最前線,どちらかというと岩がゴロゴロした場所に多いような…。隠岐での分布図を作ってみたくなりました。そういう気を起させるような孤独な生き様です。アカザ科は “風媒花” ですが “自家受粉” でしょうね。相手がそばにいないと受精に困ります。もちろん種子は海流散布で,水に浮きます。

長くなったので分類については省略します。ハマアカザ属はアカザ属 Chenopodium のように難解ではありません。ただし,まず果実によって属を決定してからです。他にはホソバハマアカザ・ホコガタアカザがあり,やや普通に見られるのはこちらの方です。この2つは波の静かな入江を好みます。


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T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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