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 イワウメヅル Celastrus flagellaris

“島根県レッドデータブック” 登載種で,分布が隠岐に限られるものを数えてみたら28種あった。その内「見たことも聞いたこともない」のが,本種とハクウンラン Vexillabium nakaianum の2つである。

ツルウメモドキ C. orbiculatus とは少し違う気がして(小型で弱々しい),念の為と大満寺山頂から持帰った(10/31)。ツルウメモドキとの差異は次のようになる。平凡社図鑑(清水建美 1989)に拠る。

A.一,二年枝に乳頭状突起を密生し,托葉は刺となって宿存する。
   葉の鋸歯は芒状   ------------------------ イワウメヅル

A.一,二年枝は平滑で無毛,托葉は早落する。
   葉の鋸歯は低くて芒状にならない   ----------- ツルウメモドキ

枝の乳頭状突起もそれらしくは見えるが,若い新鮮な枝が必要だと思った。分りやすいのは “托葉” が刺となって残ることである。小さいが鋭い,本当の刺である。枝に刺(2本が対になる)が何ヶ所かついていれば,本種と断定してよい。ただし,“芽麟” も硬く尖っていて触ると痛い。これはツルウメモドキも共通なので注意が必要。

葉の鋸歯にも明確な差異がある。イワウメヅルでは鋸歯の先端が針になるが,ツルウメモドキは波状で決して尖らない。先端が円くやや内側に捲込むような感じになる。ただし,うっかりすると同じに見える。目を凝らしてよく見ないと。

その他にも,葉や果実が小さい(約半分)とか,生育地が人里近くではないとか,気根を出して這い登る(ツルウメモドキは巻付くか寄りかかる程度)こともあるとか,色々違いがある。しかし,最大の違いは “生育量” かもしれない。ツルウメモドキは島根県全域に(日本全国にも)ごく普通にあるが,イワウメヅルは島根県では隠岐だけ,いや大満寺山のこの場所だけのような気がする。杉村喜則氏の大満寺山の標本(1983)があるのみで,他の記録が一切無いので。

島根県の産地は1ヶ所ということなので,全国の状況を調べてみたが稀なのは島根県だけに限らなかった。「やや普通か?」と思われたのは, “埼玉・長野・岡山・広島・熊本・大分” の6県だけ。規則性も感じられないが,中国・九州でやや多い。

  (×:記録なし,●:RDB登載,△:少ない,○:記録あり,?:不詳)
 北海道 ×
 青森 ×,秋田 ●,山形 ●,岩手 ●,宮城 ×,福島 △
 茨城 ×,栃木 ○,群馬 △,千葉 ×,埼玉 ○,東京 ●,神奈川 △
 長野 ○,山梨 △,静岡 ●,岐阜 ●,愛知 ●
 新潟 ○,富山 ●,石川 ●,福井 ●,
 滋賀 ●,京都 ●,兵庫 ●,大阪 ×,奈良 ×,和歌山 ×,三重 △
 鳥取 ×,島根 ●,山口 ●,岡山 ○,広島 ○
 香川 ×,愛媛 ×,徳島 ●,高知 ×
 福岡 ?,佐賀 ×,長崎 ×,熊本 ○,大分 ○,宮崎 ●,鹿児島 ●,沖縄 ×

この機会にツルウメモドキをよく見ておこうと,自宅裏の道端から枝を折って来た。初めて名前を知ったのが高校生の時,それ以来細かく見たことは一度もなかったと思う。検索表をたどってみたら,オオツルウメモドキ C. stephanotifolius になった!葉の裏の葉脈上に毛が密生している。ツルウメモドキは無毛のはずである。

しかし,いくら何でもこれは信用できない。来年, “若い枝や花序の毛” を多数見てみないと何とも言えない。確かに隠岐の記録はあるが,深山でしかも相当稀なもののはずである。

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T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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