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 オオハリイ 再説 (沈水形)

                       [前回 ⇒]
YList上で学名が更新されていたので(同一種内の変種)今後これに従うことにする。
 オオハリイ E. congesta var. congesta
 ハリイ    E. congesta var. japonica

これは『日本カヤツリグサ科植物図譜(星野卓二 2011)』,『日本の水草(角野康郎 2014)』と一致する。両書ではオオハリイに “f. dolichochaeta” (長い刺針)が付いているが,日本産は本品種に限るようなので省略してよいだろう。

『日本の水草』の解説に「ハリイよりも深い水域に生育することが多く,ときに完全な沈水形になる。」とあるが,その沈水形に初めて遭遇(2015.10.3)。何なのか???しばらく見当がつかなかった。近づいてよく見たら,葉や有花茎は水中に長く横たわり小穂のみが頭をもたげている。茎の長さは何と50cm!

細かく調べるまでもなく,これはもうオオハリイに違いない。隠岐で見るハリイ(そう多くはない)のイメージとはかけ離れている。ハリイの大きさは20cm以下,抽水状体はまずなし,と認識している(乏しい経験則だが)。確かに湿地は好むが,雨が降ったりしたら根元が浸る程度の場所,という印象しかない。

更に『日本の水草』に
 「穂や果実の長さに関してはハリイとオオハリイの中間形があり,変化の実態を
 再検討したうえでの分類学的・生態学的研究が求められる。」
という言及がある。実は,同定に自信を持てない個体に出会って,中間形があるかもしれないと気に病んでいたところだった。自分の観察不足のせいか?あるいは,そもそも両者を区別できるのか?

ただ,「中間形があるから別種にはできない,同一種だ」とは限らないだろう。別種であっても変異の両極が重なることは十分あり得る。ましてや今回の学名は“変種”同士なので問題はない。2つを分けるか分けないか?それは,両方の典型品の差異の大きさ(形態のみでなく生態や分布も)と,中間形の出現頻度が影響すると思われる。

中間形は遺伝的に固定されているはずであるが,単なる生態変異の可能性もある(環境条件や生育状態の差)。もっと観察数を増やせば推定できるだろうし,栽培してみれば更に良い(種々の条件下で)。いずれにしても,オオハリイの憂鬱が消えてスッキリ,気分が好くなった。中間形はあってよい。他にもそんな例は幾らでもある。

そして今回のオオハリイ。巨大さと沈水生以外の,稈径・小穂・鱗片・痩果の計測値はかなり微妙であった。ただし,オオハリイとして矛盾はなく,ハリイの否定もできた。かろうじて。ただ一つスカッと明瞭であったのは刺針状花被片の長さ。柱基よりはっきりと高く “痩果本体の2倍” はある。これにしても,書籍やネット上の写真を見ると変化があるようだが…。

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T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
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 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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