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タチヤナギ  Salix triandra

### 隠岐版 ###    
   [分布]
 普通種だそうであるが,隠岐では少ない。隠岐で一般の人の目に入るのは,ネコヤナギとオオタチヤナギ,そして植栽種のシダレヤナギくらいのもの。
 何故か過去の記録がなく,島後東郷産の標本が1点(杉村喜則,1986)残るのみ。
 筆者も,西郷今津・中村元屋・五箇大峯山の3ヶ所(3集団)でしか見ていない。細かく言えば,今津の他の場所(1~2株)と西田の休耕田(1株)にもある。

  [生育地]
 浅く水を被るような濡れた泥を好む。上記3地点はいずれも溜池の遠浅の岸。そして密に群生するのも特徴の一つか?。

  [樹形]
 大低木~小高木。低木のネコヤナギや高木のオオタチヤナギとは明らかに見かけが違う。タチヤナギ(立柳)の名前通り,主幹が直線的に立ち並び,枝も鋭角的にスッと斜上する(特に若木で)。大きな成木の場合も、枝の上半部にその傾向(ねじ曲がらない)が見られる。
 稀に,高さ1m程度の藪状(例えばネコヤナギ)になることもあるが,これは乾燥気味の立地での成長不良によるものと思われる。

  [花]
 ヤナギ類の初回の同定は,花がないと不可能でルーペも必須で厄介だが,本種には著しい特徴があるのでアッと言う間に確信が持てる。
 雄花に “雄蕊が3本” あって,こんなヤナギは他にない!からである。しかも隠岐にあるのはほとんどが雄木。
 雌花にも子房に長い柄があるというよい特徴がある。
 「まれに雌雄同居の両性花序も形成する」と図鑑に書いてあった。この例には一度出会ってビックリしたことがある。これも有力な情報かもしれない。

  [葉]
 葉だけを使っての検索は諦めた方がよいだろう。最近の研究で一応 “検索表” はできているが,差異が微妙で初心者向きではない。
 ただ,若葉の中ほどが赤褐色を帯びる(上部・下部は緑)のは一つの手掛かり。こんな葉が見付かればタチヤナギを疑ってよい。かつ,赤色の色素に縁があるようで,小枝や葉柄も成熟すると赤味を帯びる傾向がある。しかし,オオタチヤナギの新芽もしばしば薄赤く(黄色味)なるので要注意。
 葉形はオオタチヤナギに似ていて間違い易いが,本種は長楕円状(帯状)でオオタチヤナギのように細く長く鋭尖(披針状)はしない。
 また,・鋸歯の先端が “顕著な腺” になる,・葉柄にも腺が出る,のもちょっとした手掛かり。

  [托葉]
 わざわざ托葉に言及することもないのだが,本種には特異な特徴があってこんなのは他に例がない(多分)。托葉の表面に “突起状の腺が密布”する。ルーペで確認すれば 驚くこと請け合い。疣がぎっしりで気持ち悪い。
 なお,ヤナギの托葉は枝によって出たり出なかったり,早落性ですぐ落ちてしまったり。枝(シュート)を取り替え丁寧に探さなければならない。図鑑によって,托葉は “宿存性” となっていたり “早落性” となっていたり??。筆者は両方の例に出会ったが早落性が圧倒的に多い。従って,萌え出たばかりの若い枝の先端部を見るとよい。

  [樹皮]
 「他のヤナギと違い縦には割れず,薄片状に反り返り剥がれる。」という。樹皮は通常参考にする程度だが,本種はユニークな特徴が多くてありがたい。全く縦に割れ目が入らないのは一目瞭然だけど,直系10cm以上の成木を見付ける必要はある。もし見付かればこの一点だけでも同定可!

  [雑種]
 「発見されていない」そうである。ヤナギは雑種を作りやすいので,これも役立つ情報。一応は雑種を疑わなくてよい。

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T.Tango

Author:T.Tango
 丹後 亜興 (隠岐郡海士町)
   tttt@tx.miracle.ne.jp
 
 フィールドは隠岐に限られますが植物歴40数年。ブログの目的は「植物を調べている隠岐の人」への情報提供です。しかし外部の方の参考にもなるよう,汎用性のある記述を心がけます。
 地元密着型の軽めの記事(日記)も,「隠岐版」と断って混ぜることにします。
 質問や地元の植物ニュースは歓迎です。

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